まあ、ちきりんの例のエントリに対応する形で、タイの子育ての話でも書こうかとも思ったんだけど、それはそのうち、ということで、10日以上かけて書きためてきたほうを先に挙げるね。
タイ映画って、日本に入ってきていることは入ってきているんだけど、いまいち定着していない部分があって。
有名なのは「マッハ!!!!!!!」とか、同じ監督の「チョコレート・ファイター」とかだろうか。全国で映画公開もされたしね。
それ以外にも、映画祭で字幕付公開された映画もけっこうあるんだけど、ちょっと残念なことに、その後一般公開されないことが多くて。
今回紹介する映画「Seasons Change(เพราะอากาศเปลี่ยนแปลงบ่อย)」も、ちょっと話題になった映画「フェーン・チャン ぼくの恋人」と同じ監督が作った、ということで一部の地域ではけっこうな話題になったんだけど、いまいち上映会から先に進まなかった映画。*1
予告編はこちら。
探せば(画面が荒れているけど)日本語字幕を有志がつけた予告編も見つかります。
これ、公開された時期に日本で「のだめカンタービレ」がヒットしていたので「タイ版『のだめカンタービレ』」みたいな形で紹介しているブログがあったりするけれど、音楽大学が絡んでいる以外、ほとんどのだめカンタービレとの共通点はないので、それは忘れて見た方がいいと思う。
ついでに出演者が出ているMusic Videoも。
基本的には、三角関係。
ジャンルとしては、青春恋愛映画。男1人にタイプの違う女2人が絡む三角関係。ついでに、親子関係をとるか自分のしたい学問をとるか、友情と恋愛どちらをとるか、というジレンマ2つも絡んでくる、いちおう。
主人公のPom(ポン)。
あんまり冴えた顔していないけど、主人公。
ヒロインその1、Dao(ダオ)。
Pomと同じ学校に通っていたんだけど、本人はそのことを知らない。
知らなそうな顔してるでしょ?
ヒロインその2、Aom(オーム)。
彼女の父親と、Pomの父親は友達同士。
Pomが通うことになっていたのはマヒドン大学。ここは医学部が有名なところで、Pomの父親もPomには医学だか薬学を志して欲しかったらしい、というか、Pomの父親はPomがそっちの勉強をしていると思いこんでる。
実際には、Pomが進んだのは同じ学園でも音楽コースのほう。理由は、偶然、Daoが音楽コースに進むとわかったから。好きな女を追っかけたわけですな。
Aomの父親、実はマヒドン大学の先生。
Pomのことも知ってます。音楽コースに進んだのがバレたらやばい、と思ったら普通にバレた。
Aomに、父親への口止めを頼む。これがPomとAomの友達付き合いのはじまり。
なお、Aomは絶対音感の持ち主で、ついでに音楽理論関連では成績も抜群らしい。
どうやって学園に入れたの?
好きな女がいるからって、すぐ同じ学科に入れるなら苦労しないのだけど。
Pomには「ドラムの才能」があって、それを見いだした人がいた、ということになってる。
Jitaro。
日本人で、どっちかというとパーカッションの人。
この人が、音楽用語を何も知らなかったPomを横から助けて合格させちゃう。
まあ、ドラムのテクニックを、そのテクニックが使われているタイの歌を示す、という意味で、答えを教えると言うよりはヒントを出しているだけなのだけど、冷静になって考えるとこれカンニングどころの話じゃない。
Jitaro役やっている人は「矢野かずき」さんって言って、本職はパントマイムなんだけど、よくタイの映画には出てきます。この特徴的な風貌だからすぐにわかる。タイ映画好きにはかなりの有名人です。あと、某掲示板方面*2でも有名かも。
学園生活はどうなってる?
音楽コースに入ったPom。早々に3つの将来が見えてくる。
一つは、ドラムの才能を極める。
JitaroはPomの才能を高く評価していて、なんなら海外留学の推薦までしよう、って言ってるのだけど、別にドラムがやりたくて入った学園じゃないからPomは気乗り薄。
一つは、Rosie先生が指揮する学内オーケストラに入る。
っていうか、Daoがオーケストラでヴァイオリン弾いてるからお近づきになるためには入っておきたい。応募〆切は過ぎてるけど補欠ならなんとかなるんじゃない?ってことで、Jitaroに協力してもらって現候補を閉じこめつつ、
ティンパニ担当になります。
冷静に考えるとこれもひどい話。
実はAomもオーケストラに入っているんだけど、理論ではイケるAomも実技はてんで駄目。最終的にはティンパニ担当の隣でシンバル叩き。シンバルにはテクニックが要らないのかどうか深く突っ込んじゃだめ。
そして残る一つが、友達とバンドを組む。ChedとChatという2人の友達と練習用の防音室で仲良くなったPom。
ChedとChatはPomのドラムと組んでバンドを組むことを提案。これはこれで仲間に入るPom。Pと2人のCだからP2Cか?なんて候補も出つつ、バンド名はASS HOLEに。"holy assembly"の略称、という説もありますが、まあ単に「ケツの穴」だよね、たぶん。
とはいうものの、さすがに三足のわらじはきつい。ChedとChatの部屋に泊まり込んで遅くまで練習したりもするのだけど、Jitaroの手伝いが長引いて、オーケストラの自主練に迷惑をかけたりすることも。やはり、オーケストラやりつつバンドまでやるのは無理でした。
何かをやめることで、何かが始まることも。
雨の日にDaoを送ろうと画策したのが失敗して、結果Aomを送ることになったりと、Daoには全く絡めないままAomとの友達付き合いばかりが進展するPom。正直な話、このあたりでAomにPomへの好意があるの、見ている側には明らかなんですけど、DaoにPomが見えていないのと同様、PomにもAomは(ある意味)見えてない。バイト探しで中華街歩くって、どうみてもPomとAomのデートなんだけどね。
さて、DaoがPomを意識するようになったのは、皮肉にもASS HOLEの(第1期)解散ライブ。Pomが辞めるのを見送ってやろう、って趣旨で行われたゲリラライブでPomがドラムの才能を見せたことで、やっとDaoの目にとまるようになる。盗んだDaoのノート(Daoが音楽を始めることになった動機とか夢とか書いてありました)、意識される前に返しておいてよかったね。
解散ライブで演奏していたのは、この曲。
BIG ASSの"Len Kaung Soong"。
そんなわけで、DaoとPom、一緒に飯食ったり(Pomは野菜嫌いなのですが、Daoに言われて渋々食べたり)勉強したり(Aomにもらった蛍光ペンを又貸ししたり)しているうちに、出てきたのが海外留学の話。そういえば以前Jitaroが話していたような気もしますが、この学園からブダペストへの留学枠が2名分あるらしい。もちろん、Daoは行く気満々です。そうなればPomもブダペスト行きを考えたくなる。ただ、Pomはブダペストがヨーロッパのどこだか知りません。友達に「ドイツじゃないか?」と言われてそのままドイツのガイドブック買っちゃうくらい。
さらに、Aomとの雑談によれば、Pomの英語の成績はさんざんなのだけど、まあそれでも大事なのはテクニックと熱意、ということらしい。屋台でタイスキを食べながらJitaroに留学希望の話を改めてお願いすると、元からPomを留学させたかったJitaroは、板に打ったクギの頭だけを叩く、という練習法を伝授。Daoにモーニングコールをしてもらって、早朝ひとり練習するPom。
余談だけど、タイスキ食べながらPomとJitaroが交わした会話が(意訳でしか伝わらないという点を考慮しても)秀逸で。
- 先生は、何でタイに来たんですか?
- 好きだったから。
- 他に理由はないんですか?
- 好きだから、他に理由は必要かい?
そろそろ気がついてきた人もいるはず。この映画、見どころは若者の三角関係ではなく、このJitaroの活躍です。特に日本人には。
発覚、親バレ、仲違い、そして。
さて、問題は留学には「親の許可」が必要だということ。ただ、医薬系で勉強していると思いこんで息子自慢をするPomの父親を見て、友人であるところのAomの父親ですら「そろそろ話した方がいいんじゃないか」とアドバイスする今の状況は、入学当初よりかなり悪化していて。父への告白、そして留学に関するお願いが出来ないまま、年末年始に突入。
ところが、そんな時に、Jitaroが偶然にもPomの父親と電話で直接話してしまう。JitaroはPomが父親に嘘をついていることなど知らないから、正直に留学の件を連絡してしまう。息子が嘘をついていることを知ってしまったPomの父親。Pomと口を聞かなくなる。
いっぽう、Pomも父親に嘘がバレたことに気付く。ところが、どこからバレたかがわからない。というか、この嘘の実状を知っているのは、周りではAomだけ。Daoとうまくいっているだけに少しおざなりだったAomとの仲がさらに遠くなる。さらに、Pomがもともと音楽への興味ではなく、Daoでの興味で音楽科に入ったことがChedとChatの話からAomの耳に入ってしまって。
実家に戻れず、Aomとも決定的に仲違いしたPom。バンドを辞めても「電気代が助かるからな」と居候を許したChedとChatの部屋で、ドラムの練習に励む。
さて、その実家には、Pomの父親と話をしに来たJitaroの姿が。
Pomの父も、医薬系に進ませたいのには理由がある。音楽やったって稼げないから。自分は苦労してきたゆえ、息子には確実に稼げるほうに進んでもらいたいから。音楽は趣味でいいじゃないか。そんな思いに、Jitaroは「Pomさんは音楽が好き、お父さんはPomさんが好き、ならばお父さんも音楽を好きになってあげてください」と諭す。Pomの母親も「嫌いだった野菜ですら無理強いせずに育ててきたのに、今さら無理強いなんてできない」と言う。Jitaroが「Pomさんには才能がある」と断言するに至って、父親も許可を出す決意をした。
仲直り、そしてフィナーレへ。
Jitaroが持ってきたサイン入り願書を見て、Aomに対する誤解が解けたPom。その流れで父親とも仲直り。ともあれ、留学のための実技面接が始まります。
危なげなく通過しそうなDao。特訓のおかげで確実にレベルアップしたPom。そんななか、実技はからきし駄目だったはずのAomも実技面接の場に。実際にAomの実技はひどいものだったのだけど、そこにPomは何かを見て取ります。
ChedとChatはバンドコンテストで優勝。以前Pomに無理矢理ティンパニの座を奪われたオーケストラ仲間からも、次のティンパニ奏者の座をと頼まれる。
いよいよ、コンサートの日。前の日にPomと話をするなど、完全に仲直りしたPomの父、そしてPomの母、おめかしして、年中無休がウリだったはずの店も臨時休業して、息子の晴れ姿を見に。
最初の曲目、約1年練習してきた、ヴィヴァルディの「四季」の演奏が終わったところで、学校からこの場を借りて、と、ハンガリーへの留学生の発表が。
一人は、言わずと知れた、Dao。そして、もう一人は……「留学したら」と頼み込んでいた彼。Pomは、ティンパニの座ではなく、留学する権利を譲ったのだった。前の日にPomが父親と話していたのはその話。
2曲目に、Aomが作曲したという(ことになっている)曲「Seasons Change」を演奏しながら、映画はスタッフロールへ。
おことわり、というか、ちょっとした謎。
ちょっと、このあらすじ紹介、エロゲー的。というか、主人公Pomと、その他DaoとAum含む同級生が通っている学校について、本文中では「大学」と明記していない。
舞台になっているのが、タイでも医薬系では屈指の伝統を誇り、音楽系の学部もしっかり持っているマヒドン大学であるのは確かなんだけど、主人公達が通っているコースが大学なのかがいまいち曖昧で。
大学なら4年制なのに、入学時の挨拶では「これから3年間」とか言うし。単なる誤記かなあと思うと、マヒドン大学の音楽カレッジには3年制のPre-Collegeがあったりするんですね。でも服装はタイの大学生っぽい。
まあ、その辺あまり追求してもしかたがないので、本文中では「学園」で統一しました。
そのうち日本で大々的に公開されることがあれば、パンフレット作る人が詳しく調べてくれるでしょう、たぶん。
どうやって見られますか?
youtubeに英語字幕付の本編が12ぶんかt……というのとか、いろいろ検索すればtorrentが……というのはおいておきましょう、とりあえず。
通販で買うのが一番確実、なんだけど、日本語の書かれているサイトでSeasons ChangeのDVD在庫があるところが今少なくてねえ。
英語サイトであれば、よく使うのがeThaiCD。Seasons Changeならここ。$8.5で送料無料、24時間以内発送というふれこみ。
まあ、実際には返事が来るまで2〜3日くらいかかるかなあ。送料無料も、3週間くらいかかる船便を選んだ場合で、FedExの航空便だと追加料金がかかる。*3
送られてきたDVDはPALかつリージョン3なので、リージョンフリーでPAL対応の再生ソフト、もしくはプレイヤーで再生すればOK。ただこのDVD、日本語字幕もなければ英語字幕もなし。PC用のソフトであればどこかから英語字幕を追加して、という手もあるんですが、この辺の詳しい話も割愛しておきます。
他のお勧め映画はまた別の機会に。