最後の二番館に入って二本立て映画を3本見る (2日め・その4)

いよいよ今回のメインイベント

正午過ぎの台南は小雨でしたが、まあ傘をさすほどではありません。自転車をステーションに置いて映画館に着いたのは13時の10分前くらいでした。

全美戯院というのは台南の観光名所にもなっている、手描き看板が有名な映画館です。

地元にもつい最近まで手描き看板あったんですが、描いてた人がなくなってなくなりました。今日(6/27木曜日)が上映最終日なので、看板そのものは次に上映されるものに差し替わってますね。左は「シャザム!」「アリータ: バトルエンジェル」「キャプテン・マーベル」でしょうか。一番右がわからなかったので調べたのところ英題「Extreme Job」という韓国アクション映画のようです。

チケット売り場も由緒正しい感じで入れ替えなしの二本立てです。

もう1本の「仮面飯店」つうのがなんの映画かわからなかったんですが、見たいのは「限時好友」(FRIEND ZONE)です。入れ替えなしですから1名ぶんを示すように指1本立ててお金を出せばチケットは買えます。

それにしてもチケット売り場右上に書かれている「蜘蛛人」って「スパイダーマン」のことだと思うんですが、漢字で書かれるとなんだかアクション映画というより怪奇映画風味が増しますね。「バードマン」なら笑い飯のネタになりそうな気もしないでもないです。

チケットは1枚140元でした。大体500円ってところでしょうか。さすが二番館、安いです。

映画館は2スクリーンあって、B館は2階です。階段を登っていくと、雰囲気のある廊下に出ます。

左手にあるドアを開けると、そこが座席です。いい感じに急ですね。本当に、在りし日の盛岡東映を思い出させる映画館です。

スクリーンもでかいです。でかすぎてこれだけ横画面で撮ってしまいました。

観客もそこそこいる

平日の昼間ですからそれほど観客いないかな、と思っていたのですが、10分前の段階で10人くらいは座っていました。1人は明らかに持ち込みの弁当を食べています。ああここは持ち込み可なんだなと思って、自分も先ほど買ったちまきを食べることにします。米は餅米で、大きさを超えて食べでがありました。

自分が入ったあとも十数人の人が入ってきて、30人強で上映開始です。

一瞬Google翻訳を試してみて、諦める

ところで、最近Google翻訳はカメラ入力が出来ることをご存知ですよね。特に英語絡みの場合はリアルタイムで翻訳結果を上書きしてくれたりもします。予告編の最中にその機能を試してみました。やってる外見的にはグレーですが、記録不要で翻訳可能なため盗撮にはあたらないと判断しました。

結果的にはバッチリ中国語字幕を英語翻訳可能でしたが、実際には使えませんでした。字幕をきちんと範囲内に収めないと翻訳できない上に、そちらの結果を読もうとするとスクリーンを全く見られなくなるのですね。実際、3つか4つあった予告編の1つについては全く記憶に残っていませんでした。これじゃ映画を見てることにならない。万が一中国語字幕しかなくても気合いで読もうと決意します。

いよいよ本編開始。字幕は……

GDHに「gross domestic happiness」の英文字が付いた(私にとっては)おなじみロゴが流れて、本編開始です。ありがたかったのは中国語字幕の下に英語字幕も付いていたことでした。タイ映画を台湾で見るときには英語字幕付いてくる、ということだけははっきりしたことになります。これ事前に調べてもわからなかったので非常にありがたいことでした。そしてGoogle翻訳など使う必要ないこともわかります。

とはいえ、英語字幕もそうそう読みやすいものではありません。時々全く知らない単語が出てきたり、よくわからない熟語が出てきたりします。「period」*1とか「slut」*2とか「break up」*3とか、意外と大学入試にも出ない言葉で、こうやって英語字幕のついた映画を見まくって覚えた単語がいっぱい出てくるの見ると、「英語字幕を見ながら英語を覚えよう」ってやつがどこまで役に立つのかよくわかりません。ついでにいうとタイ映画は文化圏がハリウッドとは違いますので「monk」*4に始まる仏教用語も次々出てきたりします。まあ何もないよりはマシなのは事実です。

「FRIEND ZONE」はラブコメですが、主人公2人の関係が「友達以上恋人未満」っていう微妙な間柄ですので、基本的にはラブよりコメディのほうが多めです。特にこの類の映画では股間に肘鉄を食らわせるとか、酔ってしなだれかかった相手に酒をリバースするとか、ヒロインに野グソさせるとか下ネタも山ほどあります。そのいちいちで観客に笑い声が起きます。同じ映画ではないですが、タイでgdh映画を見たときとだいたい同じ反応です。なるほど、そのへんもタイ映画が台湾でも公開される理由なのかなと感じました。

また「FRIEND ZONE」はASEANを中心に中国を含めた世界をまたにかける映画でもあります。ヒロインが付き合っている相手が、「免税店のキャンペーンCMのための歌を作る」という理由で北は香港、東はフィリピン、南はマレーシア、インドネシア、西はミャンマー、さらにカンボジアベトナムラオスとレコーディングしているからです。台湾は舞台に入っていませんが、香港は山場の一つですからそこそこ中国語も聞こえてきます。主人公が中国語でお経を読んでいるところでは理由はわかりませんが笑いも起きていました。なるほどそういうものでもあるのだなという発見もありました。

あとは知らないうちに、タイでも英語が当たり前になっているなと感じました。「アイ・ファイン・サンキュー・ラブユー」という、gdhの前身であるGTHという映画会社が2014年に作った映画*5があるのです。
www.youtube.com
この映画は「英語が喋れないタイ人」と「タイ語が喋れない日本人」の国際恋愛の後始末をさせられる英語教師が主人公の映画なのですが、随所に「喋れないタイ人がしゃべる英語」のあるあるネタを放り込んで*6爆笑コメディにしていました。今回は「世界をまたにかける音楽プロデューサー」と「その音楽プロデューサーのマネージャー」と「国際線にも乗る男性キャビンアテンダント」というまあ英語が話せそうな組み合わせとはいえ、普通に英語を話しているのですから、5年でずいぶん変わったなという印象でした。あとついでに今回「タクシーつかまえて」が「Grab a taxi please」で済むという知識が増えました。
映画の内容ですが「友達以上恋人未満」のガールフレンドの恋人に浮気疑惑が発覚、という時点でラストは想像付くと思います。思いましたがgdhは過去に「真実の愛を見つけたと思ったけどそれは翌日まで続かなかった」みたいなラストにした映画もありますから油断なりません。なりませんが今回は想像の通りでした。それはそれで安心して見ていられるのがgdhですし、最近の大ヒット邦画みたいにネタバレを恐れて何も言えなくなってしまうこともないのはありがたいことです。

いつも目にしてはいたが気にしていなかった「仮面飯店」の正体は

NGシーンが挟まれたために途中で帰る人も少なく、終わりまで安心して「限時好友」は見られました。ここで一旦退場してあらためて2時間後にお金を払ってもいいのですが、どうせタダなら「仮面飯店」も見てもいいのかなと思わなくもありません。ここに座るまで映画情報だのチケット売り場だので何度も目にしていた「仮面飯店」ですがどこの映画かも知りません。台湾映画ならそれはそれでいい経験になるかな、わからなければわからないなりに昼寝タイムになるかな、などと思って席に戻り「仮面飯店」を検索して調べてみますと、wikipediaの以下の項目がヒットします。
zh.wikipedia.org
邦画じゃねーか!
言われてみれば「飯店」は「ホテル」のことでした。よくよく考えてみれば直訳の題名だったわけです。日本で公開されていたときには全く興味のない映画でしたが、せっかく出会ったのも何かの縁です。ここで見ていくことにしました。なお、客席は数人が帰り、十数人が増え、40人近くになっておりました。台南の二番館、人気あるな。

邦画には英語字幕は付かない

台湾で上映される映画は、中国語の映画でも字幕が付くというのが台湾あるあるなんだそうです。台湾は普段から中国語が3種類くらいあるので、字幕がないと困る人もいるのだとか。それが理由のようなのですが、まして邦画なら中国語字幕は付きますよね。

中国語についてはほとんど勉強していません。豆知識的にいくつか言葉を知っているだけですし、CMの悪影響で、私が数を数えれば「いー、りゃん、さん、すー、うー、ろん、ちゃ」になってしまいます。その程度の知識で見ていると、特にギャグを狙っているわけでもない字幕もたまに面白く映ります。

木村拓哉扮する新田刑事に、小日向文世扮する能勢刑事が「新田さん」と呼びかけると、字幕は「新田先生」になるのですね。確かにその訳し方で正しいはずなのですが、木村拓哉小日向文世より明らかに若いですからね、そこで先生、呼びされると吹き出してしまいそうになります。

あと、これは元からそうだったのか、映画館の環境なのかはわかりませんが、日本語のセリフ、小さいですね。台湾の人間は日本語のセリフを聞いてないのでそれほど困っていないのですが、中国語がよく読めない自分としては「俺達は意味のあるセリフを語っていない、雰囲気で喋っている」並みにBGMに紛れるセリフを語られると困ってしまいました。それこそ英語字幕があればよかった。

まあ逆にここに英語字幕がないことでわかったことがあります。タイ映画の英語字幕は台湾でつけたものじゃないってことです。タイ映画はタイで上映されるときにも英語字幕が付くことが多いのですが、その字幕入りフィルムに中国語字幕をつけたのが先だっての上映バージョンだってことですね。これはこのまま続けてほしいところです。

さてマスカレード・ホテルですが、先ほどの「FRIEND ZONE」に比べて明らかに下ネタは少なめでした。微妙な笑いがあるところはあって、髪型にクレーム付けた場所が従業員用理容室の前だったりとか。とはいえ何でそこで笑うのかはわからなかい部分も多かったのが若干気になりました。まあこちらの映画はミステリーであってコメディじゃないですから笑いは少なくてもしょうがないかもしれません。

あと木村拓哉といえば素人がいちばん欲しがる「ちょ、待てよ!」はありませんでした。似た言葉はありましたけどね。

2回めの「限時好友」は落ち着いて見られる

少しの休憩があって、2度めの「限時好友」です。だいたいの筋はわかりますので、今度は冒頭にヒロインと一緒に乗っている人がヒロインの父であることもわかって見ていられますし、その人が「チョンブリーに出張」しようとしていることも字幕から読み取れます。GDH(というかGTH)の過去映画に関する引用があったりもしますが残念ながら私その映画まだ見ていなかったりもします。調べないといけないなと思うことしきりです。主人公がフライトアテンダントであることもあって地名紹介はIATAの3レターコードを展開して出てきますが、他の地域は国名まで出てくるのに対しHKG(香港)だけは下に国名が出ないのはいろいろあるなと時節柄思ったりもしました。主人公とヒロインは10年近く付かず離れずの関係を続けているので高校時代から社会人まで同じ人が演じているのです。こういう場合「こいつに高校生役は無理があるだろ」ってツッコミがあってもいいのですが、タイだと女子高校生はなぜかポニーテールにするという傾向があるので、まあうまいこと記号化できるなと思ったりもしました。結婚式のシーンがたくさん出てくるのですが、主人公とヒロインの両親は双方とも離婚しているのですね。ラブコメでくっつくはなれる山ほど出すのは面白い視点だとも思いました。

GDHの映画の常としてタイアップが山ほどあるのですが、今回は常連のタイ生命保険はなし。常連のタイアップ先としてはHONDA。今回もデートでバイクの2人乗りシーンに登場。主人公がタイ航空のフライトアテンダント役だったことと世界をまたにかけることもあって、タイ国際航空の機体は山ほど登場します。サイアム商業銀行(SCB)は冒頭でロゴ出してましたが、それ以外にもQRコード決済のシーンで登場しました。食品会社のMaliは「Brother of the year」でも登場しており、その時は練乳チューブを直接食べるシーンで、今回は焼き鳥にチョコソースをかけて「フュージョン料理」とうそぶくシーンで登場。どちらも先方が望む食べ方ではないような気がしておおらかです。同じようにおおらかっだったのは飲料水のCRYSTAL。空港の所持品検査で持ち込めないペットボトルを捨てるふりをして拾い、ラベルを見せつつ一気飲みして改めて捨てるという鮮やかなシーンにゴミ捨て役のグランドホステスが「なにかタイアップCMみたいな光景だったわ」とぼやくというタイアップを見せるというもの。免税店のKING POWERは件の音楽プロデューサーが作っているCMのクライアントですからそのままCMとしても登場。スマホ会社のOPPOは特定できませんでしたが、おそらく登場人物の使っているスマホはほぼOPPOでしょう。唯一登場人物が全く使っているように見えないのにスポンサーロゴが出てきているのが動画配信のHOOQで、ここは日本未展開のLINE TVともども東南アジアでNetflix的動画配信の覇権を握ろうとしている巨頭ではありますがここが出てくるとなるとタイからDVDは出てこないかもしれません。Brother of the yearもタイ発でのDVDは出ませんでした。タイではDVDが違法コピー蔓延のせいか売れていないようですからこの傾向は続くのかも知れません。

つづく

*1:生理、月経

*2:ヤリマン

*3:恋人と別れる

*4:僧侶

*5:これもラブコメです

*6:日本のそれと大差ありませんのでだいたいわかります