不動産2.0についてひさびさに書く

また不動産に関する話題が増えてきたなあ、と思ったら、そうか、そういう季節なんだな。
自分が過去に「不動産2.0」って言うけどそうしない方が良いところもあるんだよなあ。とか書こうとしたのがやっぱり1年前。そういうものなのか。

専門家でもない自分がどういう切り口で書いて行けばいいのか、迷っていたら良い記事があったので、そこから抜き書きしていく感じで。

その記事は、「不動産屋が扱う物件はすべて同じなの? | エキサイトニュース」。ここにあるいくつかの文章がこの辺を語るのにちょうど良いような気がした。

大家の考えと、得られる物とのギャップ。

たぶんこの一言に尽きるんだ。

「基本的に物件の募集方法は、オーナー(大家)が決めるんです」

自分が大家になったことを考えてみればいい。運用しようと思って作った新築だか昔自分が住んでいた家だかわからないけれど、それを誰かに貸したい。
貸すからには家賃は取りっぱぐれのないようにしたいし、出来ればキレイに使ってもらえれば修繕費が浮くし、まあさらに欲を言えば家賃とかも出来るだけ高めに取りたい。

で、不動産2.0で、公開の場所に不動産を置いてCGMで土地情報やら物件情報を集めて、そこで適正価格になるようオークション形式での場を作ったとする。別にそこで決済できなくても、地域ごとやらなんやらでそういう金額が出てきたらいい、としてもいい。で、その場がオーナーに提供出来るのは、たぶん今上げたオーナーの要望のうち、せいぜい3番目だけなんだ。

しかも、作ったマンションが相場の割に安いなら、もっと評価されるべき、という点で次回以降家賃が上がるかも、という事でしかない。借りる側も2年から3年は家賃が変わらない、というのはある意味メリットでもある。仮に、その場での人気で月々の家賃が変わる変動家賃制とかだったらどうだろうか。さらに仮定してその場の人気が人為的な操作の加わらないものだとしても、毎月の家賃が固定費として計算出来ないのはきつかったりしないだろうか。

我々が物件を覗き込む時、物件もまた我々を見つめている。

さて、オーナーの希望として残る要望は、家賃のとりっぱぐれのない人、キレイに使ってもらえる人、そういう人に借りて欲しいということだ。この希望を取り入れるとすれば、この不動産2.0というシステムには、賃貸物件の情報だけでなく、ユーザーの利用履歴も入れる必要がある。こちらは大家の側から入れられ、閲覧出来る情報として蓄積されていくわけだ。ここまで情報が共有化されるなら、もしかしたらオーナーも不動産2.0に物件を登録してくれるかもしれない。

でもそうすると、過去にトラブルのあった人は、次回以降なかなか借りられなくなる。もちろん「俺はそんなことしないから大丈夫」と言う人がいるかもしれない。でも、それはこのシステムにノイズが乗らない、という最初の仮定があるときだけ言える話になる。実際CGMコンテンツにノイズが多いことは論を待たない。

このことは、先のページにある

先の2〜3割は、大家が信頼できる不動産屋のみの扱いに限定している、もしくは大家が募集を委託した不動産屋が、自力で契約をとる自信がある物件っていうことらしい。

この文章からも見えてくる。大家が信頼出来る不動産屋のみの扱いに限定している、というのは、ある意味店子を値踏みしてくれる不動産屋がある、って事なんだろうと思う。

過去に数回賃貸物件を借りたときのうち一度、もろにそういう扱いを受けたことがある。良い下宿があればそちらに引っ越したいな、と思ってとある不動産屋を訪ねたとき、勧められた物件は実は他の人が入ろうとしているところだったらしい。その人が手付けを打っていたのかどうかはわからないが(たぶん払ってなかったと思う、そう思いたい)、不動産屋の人は「保証人があやしい」という理由でその人との契約に二の足を踏んでいた。そこに普通の保証人を立てられる自分が来たものだから、その物件をこちらに回してきたというそんな話だ。

これは書いている自分の方が得をした話だからこんなにさらっと書けるけど、これが逆の立場だったら頭に来たりしないだろうか?まあ来ないならそれでもいいけど。

さらにもう一例。別の不動産店だが、まあ確かに普通なら貸りられないような物件まで揃っている品揃えとしては絶妙な店があるんだが、ここの出している賃貸案内には借りる側の心得として「敷金は帰ってこない物ですからそのつもりで借りてください」なんて事が書いてあった。
まあこれも形式的なエクスキューズだと思う(そう思いたい)が、これを見て借りに来る人なら敷金返せ、とは強く言わないはずで、その実績があれば品揃えも増えるだろうな、という気にはなる。

オーナーを大事にすることが、部屋を探しに来た人を満足させることにつながる。

そう、よくよく考えてみれば、家を借りる側は基本的に不動産屋とは部屋を決めるその時だけの関係だが、大家と不動産屋はその物件がある限り続く関係になる。何かしらのサポートや信頼関係がより多く必要になるのはそちらだろう。客が値踏みされるのは不快と言われれば不快だが、値踏みされて不快な客は二度と来ないだけで、良い物件が集まればそれなりに借り主は集まるだろう。

逆に借りる側にとっても、その値踏みの基準は不動産屋や大家によって異なる可能性が高いわけで、ある店や大家とトラブルになっても、次回はそこを避ければいいという話になる。もしこの情報が共有されたらどんなことになるだろうか。いやまあ今でもある程度の困った借り主情報は噂レベルで共有されているはずなんだけど、それが確実な記録で残るとなると、どんなもんだろう。

それが、不動産情報を一つに集めない方が良いこともあるんじゃないかな、という話にもつながってくるかと思うんだ。

掘り出し物物件があるかもしれない期待

余談に近い話。大家との関係なんかを抜きにして。仮に不動産物件評価システム、なんてものが出来て、その係数はCGMで作ることにして、理想の家賃が決まるとする。その家賃で借りられる物件って本当に良い物なんだろうか。

それは基本的に適正家賃だ。最寄り駅から都心まで○分で行けて、その最寄り駅までの道筋が夜でも明るくて、静かで治安もそう悪くなくて、でもって南向きの窓が公園に面している2階以上の2DK、とか要素を入れれば家賃が出てくる感じ。それはそれで楽だろう。

でも、そこには夢がない。いや、別に強い夢がなくてもいいんだが、「この家賃にしてはまあまあだな」という幻想はそこにはなくなる。逆に「ここは割高だ。次の部屋を探そう」なんて要望も減るよな。引っ越しが多くもなく少なくもなく、安定しているのはこの幻想があるからじゃないだろうか。はっきり限定出来ない情報が残っているほうがいいことってないだろうか、と思う。ま、これは本当に余談に近い話なんだけど、そこまで人って強くないような。