ラウンジって本当に使える場所なのかなー、という話。

少し前になるけれど、「「VIPラウンジ」は自分には関係ないと思っているアナタへ。バックパッカーの僕が年間1万円で利用してますけど何か? | 世界新聞」という記事が話題になっていた。

確かに空港のVIPラウンジは、エコノミークラスで旅行する人にとって、毎回見せつけられるビジネスクラスの座席と同じくらい憧れのまとだ。食べ物飲み物が無料だとか、インターネットがタダで使えるとか、ソファーが柔らかいとか、なんか乞食的にあこがれる話も漏れ伝わってくる。実際くだんの記事でもその辺はいろいろ書かれていた。

でもまあ、本当にそうなんだろうか、ここでは少しその辺を考えてみたいと思う。

本当にラウンジは高級感あふれる場所なのか。

偶然にも、今回のタイ旅行では、帰りにスワンナプーム空港でCIPラウンジを使っていた。CIPってなんの略だか一見わからないけれど、少なくともタイではVIPつうのは王族やらその辺に類する人だけに与えられる呼び名であって、たくさん金を払っている程度の人は「商業的に重要な人」扱いなのね*1。まあだからCIPラウンジってのは、他の地域でのVIPラウンジとだいたい同じ扱い。

ここも、サービスはそれなりにきちんとしている。
入場時にはチケット提示でコピーを取られる。で、ゲート入場時間が近づくとスタッフがお知らせしてくれる。シャワーは無料だし、ドリンクもアルコール、ノンアルコール飲み放題。無料のインターネットも使えて、無料の食事もある、ことになっている。

ことになっている、というのは、無料の食事なんてものに期待しちゃいけないから。

ほしがる人が多いのかけちっているのかは知らないが、こういうところの軽食は本当に軽食だ。少なくとも日本の格安ホテルの「朝食付き」以下の食事だと思った方がいい。質も量も。ないよりまし、程度。
確かに出国カウンターを過ぎてからの食事スペースはやたら高いことが多いけど、それにしてもこれは厳しいんじゃないかなと思ったりもする。

客層も微妙だ。
いちおうどこのVIPラウンジもスマートカジュアルがドレスコード、ということにはなっているはずなのだが、スーツっぽいものを来ている人は皆無。ワイシャツっぽいものを着ている人もほとんどなし。まあ年末年始だからね。仕事で動いている人もそうは多くないんだろう、とひいき目に見ても半分くらいはバックパッカー。結局、ラウンジの利用料ってまじめに買うと高いから、頻繁に利用する人となると、ビジネスクラスの座席利用者かバックパッカーしか残らないんだろう。こちらもバックパックこそ背負っていないとはいうものの、マインド的には大差ない。

人が多く(というほど多くの人は利用していないっぽいが)出入りするところは、こまめなメンテナンスが必要になる。が、人手が足りてないのかやる気がないのか、それが行き届いていない。
床は一部分、なんとなくべとついている。おそらく前の利用者が酒をこぼしたんだろう。所々にある電気スタンドは消えている。これは利用者がスマホタブレットの充電のためにコンセントを抜いて、そのままにしていったから。飲み食いしてそのままにされた机の上もすぐには掃除されない。空いている席はそれなりにあるからそこ以外を使えばいいんだが、これがまたやさぐれ感を増す。

なんらかの事情でラウンジを数カ所で使ったくらいだからどこもそうだとは言わないのだけれど、そういう扱いの場所になる可能性が十分にあるところだというのは覚えていたい。

本当にラウンジは長いトランジットで使える場所なのか。

確かに安い航空券で乗り継ぎをすると、乗り換え時間が長くなる。もともとLCCの定時運行に信用がおけないのもあるし、航空会社が違えば乗り換え保証もないしで、乗り継ぎの余裕時間はますます長くなっていく。
そんなときに微妙な空港の椅子でなく、ラウンジのソファでゆっくり休めるなら、それに越したことはないようにも思える。

が、くだんのエントリに書いてある世界各国のラウンジのなかで、長時間ゆっくり仮眠の取れるところはほとんどない。

まず、ラウンジは24時間営業でないところの方が多い。イギリス、スペイン、イタリア、モロッコ、インドと6ヶ所くらいの空港ラウンジが挙げられていたが、その中で24時間営業なのはインドだけだ。夜間過ごすことはだいたいのラウンジでは考慮されていない。そこに挙げられていた以外だと、たとえば24時間営業で有名な仁川空港にも24時間営業のラウンジはない。

さらに、けっこう多くのラウンジには、滞在時間制限がある。そのなかで多いのは2〜3時間。まあ、5時間くらい居られるところもあるし、もちろん時間制限のないところもあるから、事前に調べておけば役に立つこともあるかもしれない、程度の扱いにしておいたほうがいい。

本当にラウンジはゴールドカードを持っていれば使えるのか。

楽天プレミアムカード以外にもゴールドカード、プラチナカードの特典にプライオリティパス(ラウンジの使用権)をつけているところはある。楽天プレミアムカードがその中で一番年会費が安いのはそれなりに確かだ。
ところが、楽天プレミアムカードの家族カードにはその特典がつかない。つまり、夫婦でラウンジを使おうとすると、楽天プレミアムカードは最安値の選択ではなくなってしまうのだ。
ちなみに、アメックス系のカードは、家族カードにもラウンジ特典をつけるものがあって、夫婦でラウンジを使うにはそちらの方が維持費が安くなるので、それは覚えておきたい。

夫婦じゃない、友達と旅行だから。うん、そういう人も多いと思う。楽天プレミアムカードにつくプライオリティパスには友人特典はない。プライオリティパス同伴者は3000円払う必要がある。安宿回って旅行している人にとって、ラウンジの3000円を2人で割り勘して1500円払って、その値段に見合う場所だと思う?そう思うのなら使えばいいと思う。もしくは友人にも自分のアフィリエイト踏ませて楽天プレミアムカードを契約させるか。選択肢はいろいろあることにはあるが、本当にそれだけ過ごす時間があるのか、ということも考えておきたい。

本当に空港の待ち時間は長いのか。

出発時刻の2時間前にチェックインさせられて……ということを考えても、確かに空港の待ち時間は長いような気がする。気がするが、2時間前にチェックインさせられるのにはそれなりの理由もある。出国検査やら荷物検査やら、いわゆるCIQ関連の待ち時間が意外とかかるのはご存じの通りだ。

そもそも、エコノミークラスならチェックインカウンターの数も微妙に少ないから結局そこで待つし、出発時刻の2時間前といっても、出発時刻つうのは飛行機がボーディングブリッジを離れる時刻だから、その時刻の数分前には飛行機の中だ、ということを考えると、本当にフリーな時間は実はそんなに多くない。

これを避ける方法はもちろんある。ビジネスクラスだ。空港によっては、つうかまさにタイのスワンナプーム空港がそうなんだが、追加料金を払うことで空いてる関係者エントリーを通れる特典も用意されている。冷静になって考えれば、ラウンジというのはそうやって無駄に並ぶことを避けた人が余った時間をつぶすために作られたものであって、エコノミークラスで出国審査に長蛇の列を作っている人が無理矢理入るものではない、というか、数千円払ってどのくらいの時間過ごせるのか、ということには改めて思いをはせてほしい。

蛇足で言えば、確かに世界一周旅行か何かでたくさんの空港を回ることになれば、それだけラウンジを使う機会も多くなるとは思うのだけど、そんなにラウンジを使う機会が多いって、せっかくの旅行で無駄な時間を増やしていないだろうか、とそこまで考えたほうがいいのかもしれない。

ついでに、楽天プレミアムカードの海外旅行損害保険は使えるのか。

楽天カード楽天プレミアムカード、どちらにも海外旅行損害保険が付帯している。楽天カードは利用付帯なので、航空券の支払いに楽天カードを使わないと有効にならないのだが、楽天プレミアムカードは自動付帯なので、カードを使おうが使うまいが損害保険が有効になる。これは確かにありがたい。ありがたいのはありがたいのだが、この保険、微妙に見かけだおしだ。
死亡保険金は5000万円と、海外旅行保険としてはけっこうな金額になっている。でも、死亡保険金の掛け金って安いんだよね。1000万円積み増ししてもほとんど掛け金は上がらない。これは最近だと海外旅行損害保険をウェブでアレンジ出来るところがあるのでそれで試してみてほしい。だいいち、一人旅か何かで格安旅行する人に、死亡保険金って本当に必要か?そんなわけで、この5000万円って金額、たぶん宣伝のために作った金額なんだろうなと思う。
で、それをふまえると、海外旅行保険で必要なのは、治療費用と携行品補償、ついでに救援者費用ではないだろうか。楽天のカードについてくるその辺の補償、微妙に安い。楽天プレミアムカードについてくる海外旅行損害保険の引受先は三井住友海上なので、そこの純正商品であるところの@トラベルと比べてみると、桁が1つ違ったりする。その金額で本当にいけるのかは考えておきたいところだ。*2

ちなみに、ラウンジの料金を含めて「1万円の元がとれるか」という観点で考えると。旅行先や補償内容にもよるが、海外旅行損害保険の掛け金は1日500円くらい。1枚のカード持ちが夫婦で旅行するとなると、ラウンジ料金が節約できるのが1回あたり3000円くらい。往復でラウンジを使うとして、1年に一往復17日くらいの海外旅行でトントン*3、という計算になるのかな、という感じになるのかなと思う。節約という観点より、ちょっと贅沢品を買う、という考えでいたほうがいいような気はする。

それにしても


せっかくラウンジにタダで入れて、ネットに繋がって何をしていたかと言えば、結局パズドラなんだから、自分自身時間を有効に使えているとはとても言えないな。

*1:C=Commercial

*2:ちなみに、国民健康保険には海外での治療に関して後から還付が受けられる制度もあるので、立て替え払いが出来れば大丈夫、という観点で治療費用を重視しない人もいる。公平のためにそこは書いておく。

*3:ラウンジを使わないときに比べて1回3000円くらいいつもの旅行より多めに払っているので、そこを含むと損益分岐点の日数は微妙に長くなる