生存表明も兼ねて。*1
なんか、「リストラなう」のたぬきちさんが、コメント欄を書籍に収録するにあたってオプトアウトを呼びかけたとかという話で、揉め事になってるらしいですね。
例によって嫌儲がらみかなあ、という気がしないでもないのです。
ちょっとこれについて考えてみましょう。
ホテルジャンキーズ事件
ホテルに関する掲示板の内容を転載して出版したことで、掲示板管理人の著者と出版社*2を相手に、掲示板の書き込みをした人が起こした裁判です。
で、判決の詳細はこちら。
ぶっちゃけた結論から言うと、この裁判例から見えるのは、
- 匿名の書き手であっても著作権は(著作物なら)存在する
- 全てのコメントが著作物というわけではない
- 印税は使われた著作物の分量に応じて分配
ということですね。
では、今回の場合はどうなのだろう。
だから書籍化に当たって僕が強く要望したのは、みなさんのコメントも採録できるなら書籍化しましょう、ということでした。
http://d.hatena.ne.jp/tanu_ki/20100602/1275447586
残念ながらすべてのコメントを採録することは紙幅のつごうでかないません。いま編集部が猛急で掲載したいコメントをセレクトする作業を進めています。
ということなので、おそらく全てのコメントが載ることはなく、さらに言えばコメントの掲載にはなんらかの取捨選択が加わるのでしょう。
どういう取捨選択を入れるのかはわかりませんが、ここに実は考えるポイントがあります。
著作物を掲載された≠印税をもらえる
著作物を利用したかったら、著者に許可をもらおう、その対価を払おう、というのは一見正しいようですが、利用したい側が著作物を無料で使える場合があります。
今回の場合に適用出来そうなのは「引用」です。
引用の要件、これも別に著作権法に書かれているわけではなく、過去の判例から言われていることがあって、
- 公表された著作物であること
- 明瞭区別性があること
- 主従関係があること
- 公正な慣行に合致していること
- 目的上正当な範囲内であること
- 出所の明示をすること
というあれ。
書籍化するブログのコメント欄の書き込みですから、公表されていることについては争いの余地がないでしょう。
次に、明瞭区別性と出所明示。これは編集者がきちんと仕事をすれば問題がなくなります。
最後に、主従関係と公正な慣行。
ここは、どのコメントをどのように紹介したいのか。という、たぬきちさん本人の判断にかかってくるでしょう。
コメント欄を受けて書いたエントリがあって、そのコメントから一部を引用する*3、ということであれば、おそらくブログ内で許可をもらうまでもなく引用が可能。
エントリを書いていなくても、何かコメントを読んだことで自分で感じたことを、章の合間にでも追補して書けば(主従関係を満たせば)そのコメントも紹介可能。
ということになりそうなんですよね。
そんなこんなが、
このもめ事はともかく、おそらくブログの本文が主となる書籍化の場合の「コメントの一部採録」ということを考えるといろいろ味わい深い。
http://b.hatena.ne.jp/shidho/20100603#bookmark-22001608
とブクマコメントを残した理由でした。
法律の専門家が書いた話でないので、どこまで参考になるかはわかりませんが。
余談
ところで、嫌儲といえば、思い出したことがあるんです。
いまTwitterが革命的だ!iPhoneだ!とかUstreamだ!と言ってる佐々木俊尚さんの講演会に、2年ほど前に聞きに行ったことがあるんです。
まあ、そのときはiPhoneもUstreamもましてやTwitterもなくて*4、内容は「これからはWeb3.0だ!」だったんですが。
で、途中の休憩が終わったあとに、聴講している人からリクエストがあったから、ってことで、講演しているお題にも絡んでくる「嫌儲」って問題についてちょこっと話したんですよね。
ただ、そのときの結論は「大した問題ではない。そのうち下火になる」。
いつがそのうちだかはわかりませんが、そのうち、が早く来るといいなあ、と思うことしきりです。