CCでの「継承」条件取り外しは再コピーの禁止を明示できないと思う。

「コンミラ」ことCONTENT'S FUTUREは、表示 - 非営利 - 改変禁止 のCCで販売されている。*1

で、この鼎談集の著者の1人であるところの小寺信良氏がこの本とCCへの関わりについて書いた記事がクリエイティブ・コモンズに賭けた「コンテンツの未来」
この中に、若干気になる部分があった。

 ここで注意して欲しいのが、CCのライセンスが付けられているのが、物理物としての書籍であるということである。またライセンスの中に、「継承」が付けられていないことにも注目して欲しい。

 これらが何を意味するかというと、コピーするには物理物としての原本が必要であるということである。つまりコピーするからには、最低1冊は本が買われるだろう、ということなのだ。勉強会に出席した人がコピーされた資料をみて、「これはいいから僕も誰かに配ろう」と思っても、同じライセンスを継承しないので、そのコピー物はCCではない。つまりコピーのコピーのコピーの……、と言った伝播は、想定していない。

クリエイティブ・コモンズに賭けた「コンテンツの未来」 (2/3)

以下は「CCの表示 - 非営利 - 改変禁止」に関する条文の一部なんだが、

第4条 受領者へのライセンス提供

あなたが本作品をこの利用許諾に基づいて利用する度毎に、許諾者は本作品の受領者に対して、直接、この利用許諾の下であなたに許可された利用許諾と同じ条件の本作品のライセンスを提供する。

http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/2.1/jp/legalcode

自分には、この条文を読む限り、CCの当該ライセンスは、

誰か*2が「コンミラ」のコピーを(条件に従って)配布したら、受け取った人*3はそのコピーをさらにコピーしてもいいよ、と著者*4が直接許諾したことにするよ。

と言っているようにしか見えないのだが、別の条文と組み合わせると孫コピー禁止が出来るのだろうか?あるとすれば、上記引用にも見られる"物理物としての原本"ということからの制約なのかもしれないのだけど、同許諾には、

上記に定められた本作品の利用は、現在及び将来のすべての媒体・形式で行うことができる。あなたは、他の媒体及び形式で本作品を利用するのに技術的に必要な変更を行うことができる。許諾者は本作品に関して、この利用許諾に従った利用については自己が有する著作者人格権及び実演家人格権を行使しない。許諾者によって明示的に付与されない全ての権利は、留保される。

http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/2.1/jp/legalcode

ともあって、

  • コピーは全ての媒体・形式で行える(そして、コピーしたものにも同じ許諾が与えられる)
  • 技術的に必要な変更は行える

となれば、元媒体を制限していないわけで、そんな方法で権利を制限出来るとも思えない。

それは、「継承」が「改変禁止」がついた時点で両立しない選択肢であることからも読み取れる。「継承」というのは、二次著作物(元著作者と二次著作者の双方の著作権が存在する)に対して同じライセンスをつけることを強制するライセンスであって、「改変禁止」(複製に対して許諾を与えるのは孫コピーであっても元著作者)では「継承」の対象となる著作物が存在しないからだ。

なんというか、小寺氏が自分の意志として「出来ればコピーは原本から行ってください、よろしくお願いします」と言うのであれば納得も理解も出来るのだけど、それをCCを使って意志表明するのは無理なんじゃないだろうかと思う。さらに言うと、一度CCを選んだ以上、そういう追加条件を付けるのは「利用者に許諾条件をわかりやすく教える」というCCの理念に反するんじゃないだろうか?

場合によっては、そういう条件を別途用意したデュアルライセンスを設定することも考えられるんだが、デュアルライセンスの場合、適合条件に合う範囲内で利用者は好きな方のライセンスを選べるわけで、そちらのライセンスは選ばれるのかどうかがよくわからないことになる。

それはそうと、例のあの話について。

これ書いたらやっぱアレについては言及しないといけないとは思うんだけど、

  1. 誤字あるよ、直せよ。
  2. そうかもしれませんがちょっと気がつきません。直しますのでご指摘頂けないでしょうか。
  3. いちいち指摘出来るほど暇じゃないので、誤字が多いから指摘してやってくれ、って公言するよ。
  4. よろしくお願いします。受付アドレス作ります。
  5. (気がついた人がdiff取ってメールする)

で、たぶん建設的に進んだんだろうなあ*5と思う話が、どこでボタンを掛け違えたんだろうねえ、よくわからない、というのが正直なところ。

*1:今気がついたが、CONTENTS' FUTUREじゃないんだね。とはいえsがつくかつかないかでどの程度ニュアンスが違うのかなんて知識は持ってないけど。

*2:この場合は"あなた"

*3:この場合は"受領者"

*4:この場合は"許諾者"

*5:別名を一休さんメソッドと言うのかもしれない