コピーワンス、煽りたい気持ちもわかることはわかるが。

小寺信良氏のコピーワンス大そもそも論

いやね、正直コピーワンス信号の取り扱いは面倒くさいのでなくなる分にはありがたいので、こういう檄文にツッコミを入れない方が良いんだろうとは思うのだけども。

細かいところからね。

放送にDRMをかけている国なんて、世界中で日本しかない。

まあ、「地上波」「デジタル」「無料」「民放」ってあたりの、まあ自明の言葉として省略している言葉を補ってやればこれは嘘じゃない。まあだから危機を煽るやりかたとしては有効。だが、これらの言葉が抜けるともう正しい文章じゃなくなる。そもそもデジタル地上民放が世界的に見てもまだまだなかなか始まってないんだからその上で海外と比較することに意味があるんだかないんだか。

次に、

しかも、だ。その鍵であるB-CASカードを握っているのは、公共団体でもなんでもなく、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズという、1私企業なんである。こんな重大な権限を、ごく普通の株式会社が持っていていいものなんだろうか。

まあ、これも「公共的な性格を持つ放送が」っていう前段で言われていることを前提にすればその通りなんだが、通信と放送が融合するとか、デジタルで著作権保護だって言われているときにこの動きってむしろ当たり前だろと思う。近頃日本ではiPodがシェア60%だそうだが、iPodDRMはApple1社で管理していて、その支配はかなり一方的ですぜ。デジタル著作権保護なんて、お約束がなければ穴だらけなんだから、これもその辺をわかった上での煽りっぽいよなあと。

パソコンに搭載するデジタルチューナーを考えて貰えばわかるが、パソコンでデータ放送なんか受けてどうする?

これはツッコミではないのだけど、地上デジタル放送はデータ放送の全画面表示的な形で表示されるので、データ放送の本体は見ないにしてもデータ放送は受信しておかないと画面を見られない。まあこれは自分も勉強中の部分なのでうまくTSを解析すればいけそうな気もするのだけど、それだけデータ放送ってやっかい。

そして最後、

1つの漏れなく10個売るのと、1000個ぐらい盗まれるが10億個売れるのと、どちらが資本主義社会としてマシだろう。

本人が「乱暴だが」って言っていることからまあ小寺氏はわかってて言っているのだと思うのだけど、1000個盗まれたからといって10億個売れるかどうかなんてわからない。1000個盗まれて1個も売れない可能性だって十分あって、実際どちらにすればよかったかなんて比較できないし。

例えばCCCDはいくつかの会社が採用を取りやめたのだけど、そのおかげでCDは売り上げを回復したかというと回復していない。もちろんここにはアーティストが魅力的じゃないとか、タイアップがもうすでに効果的じゃないとか、もしかしたらCDから着うたに変換できないからやだとか、いろいろな理由がありえすぎて、一つのことが変わったくらいじゃ効果が読み取れないということがあるから。

いやね、別にコピワンは当面のところなければないほうがいいので、小寺氏のアジに奮起される人が増えて、結果コピワンがなくなるなら助かるのだけどね。

追記:
 あとね、ARIBのことをけっこうくさしているけど、コピー不許可とかコピー1回可とか伝えてきた信号をきちんと実行しないレコーダーに認可なんかおろせるわけないじゃないですか。逆もまたしかり(コピーフリーで送ってきた放送をコピーワンスで録画したりすることが許されるわけもない)なんだから。コピーワンス決行に責任があるのはARIBじゃなくて、元の権利者から言われてそう決めた放送局よ。