世の中には「実話を元にしたフィクション」という便利な言葉があるのに。

最近Facebookでちょっとだけ流行った話。

飛行機の中で黒人女性の隣に座った白人女性が、隣に黒んぼがいるのはいやだとクレームをつけたら、スチュワーデスがあんな白人の横に座るのはいやだろうと黒人女性をファーストクラスに案内した

驚いたことに、今回Facebook上ではこれが実話として紹介されているわけです。さらに驚いたことに、これが実話として紹介されたのは今回が初めてのコトじゃないらしい。すでに7年前には「これは本当にあった話です」って枕詞がついているエントリが散見されている。

いろんなところで語られている話なので「アパルトヘイト撤廃直後」とか「ブリティッシュエアラインで」とかディテールがついたバージョンもよくみかける訳ですが、いずれ本当にあったと思うなら、これを見たのは誰だよ、というところを少し考えたほうがいいと思うんですがまあいいか。

今回は「人種差別に反対する人はシェアしよう」って言葉が最後に付きまして、この辺がFacebookならではと言えないこともないんですが。これも、この話が昔チェーンメールで流れたときには「人種差別に反対する人は転送してね」みたいな話があってもおかしくなかったようで*1

そうなるとまあ、人間変わらないなあということで驚くとか以前になんか残念です。

「実話を元にしたストーリー」とかそういった話。

「実話」と言っても、世の中「これは実話」から「実話を題材にしたフィクションです」とか「事件から発想を得たフィクション」とか、ただ「実話」がベースとなった作品でもいろいろありまして。

これから紹介する映画にもそういった実話絡みの話があります。ここで紹介する映画ですからほぼ当然のようにタイ映画。

原題を"สิ่งเล็กเล็กที่เรียกว่ารัก"。英名を"Crazy Little Thing called Love"もしくは"First Love"と言います。が、前者のタイトルで検索するとQUEENのPVばかりが、後者のタイトルで検索すると宇多田ヒカルのPVばかりがひっかかるのが難点と言えば難点。どうしてこういうタイトルにするか理解に苦しむんですが、それでも英題をつけているだけまだマシなのか。

ちょうど去年の今ごろ*2、タイで少しヒットした映画。

まずは、こちらの予告編をどうぞ。と言ってもこちらの予告編には英語字幕も付いていませんので、チョッとだけ見ていただければ十分です。注目していただきたいのは2分53秒くらいから数秒間なんですが。

いちおう時間指定したリンクを貼り付けたんですが、はてな記法では時間指定を無視するみたいですね。じゃ、当該のシーンを抜き出しておきます。

とりあえず、Based on true Storyって書いてありますね。実話を元にしたストーリーとでも訳せばいいんでしょうか。そういう売り文句も入った映画なわけです。

今はけっこう便利な時代でして、探せば英語字幕がついた予告編くらいは見つかります。せっかくですので、この青春恋愛映画の予告編を英語字幕付きで楽しんでください。

冒頭から出てくる、眼鏡かけた色黒の子がこの話の主人公でして、目の前に飛び降りた男の子と数年越しの恋におちる、というお話です。目の前に男の子が飛び降りてくるような実話があるかどうかは別にして、確かにまあ数年越しの恋、なんてのは実話としてはありがちかもしれません。

ただ、ここでもういちど注目していただきたいのは先ほど抜き出した2分53秒からのシーンについた英語字幕です。書かれている英字だけでなく、下の部分に書いてあるタイ文字の部分まで含めて"Based on the true Story of everyone"って訳されているんですね。いつのまにかtheが増えたのも若干問題が生まれるような気がしますが、さらに"of everyone"がついちゃったら実話でもなんでもなくなっちゃうような気がしてきませんか?

今回この映画の予告編を紹介したのは、世の中、ソースを確かめるのは本当に面倒だという例という意味もあります。実際、普通に文章が読める人だけとも、物事は全て確かめられるものだけとも限らないので、どうでもいい話に「実話」とかつけるのは本当にやめて欲しいところです。

ところで、この映画の主人公、恋に落ちたメガネかけた色黒の子ですが、愛しの彼に振り向いてもらうために自分磨きします。
その使用前、使用後がこちら。*3

驚くべきは、この二人が本当に同一人物(Pimchanok Luevisadpaibul)だってことかなと。
やはり「実話かどうかはどうでもいい」っていう言葉はこういう事実を前にするとかすんでしまうと思うんですが、そこのところどうでしょうね。


追記:
今回紹介した映画は海外通販でないと買えないですが、この女優の出ている映画は意外と日本でリリースされていまして、
マッハ! ニュー・ジェネレーション [DVD]人肉ラーメン [DVD]
ホラー映画「人肉ラーメン」や、アクション映画「マッハ・ニュージェネレーション」などに出演しています。どちらも、今回紹介した映画とは全く毛色の違う映画なのでそのままお勧めするわけにはいかないのですが、困ったことに両方ともなかなかいい映画なんだ、これが。

さらに、まだ日本ではリリースされていませんが昨年公開したばかりの「Love Summer」という映画にも出演しています。蒼井そらに続いて辰巳ゆいがタイ映画に出演、ということでちょっとだけ一部の好事家に話題になった映画ですので、そのうち紹介するかも、しないかも。

さらに余計な追記をしておくと「人肉ラーメン」には「The meat grinder」、「マッハ・ニュージェネレーション」には「Bangkok Knockout」という英題がついていました。前者はより映画の内容を示しているような気もするのですが、ムエタイ格闘アクション映画だからといってなんでもかんでも「マッハ」つければいいというのはいかがなものかと。

*1:というのは別に裏とったわけでなく単なる想像なんだけど、ここの脚注までちゃんと読んでくれる人がどれだけいるんだろう

*2:と言うにはもう少し後の話だけど

*3:こちらで紹介されていた写真です