先生あなたはか弱き大人の代弁者なのか。

「さらが5まいあります。1さらにりんごが3こずつのっています。りんごは ぜんぶで 何こあるでしょう」
という問題について盛り上がっています。

これを3行でまとめられなかったので4行でまとめると。

  • 「遠山啓」という人が「水道方式」という方法で算数を教育する手法を編み出した。
  • この手法によると、かけ算は「1単位あたりに含まれる数*1」×「単位数*2」として理解させるのが一番いい。
  • 今回、一番最初に書いた問題を式にした場合「1単位あたりに含まれる数」=皿1つに乗っているリンゴの数, 「単位数」=皿の数,をかけ算の式にするわけだから、3x5が正しく、5x3は正しくない、という話になるのだ。
  • そして、これは学習指導要領にも載っていることなのだ。

ということのようです。

これを、ちょっと調べてみようと思ったのですが、この問題、意外と有名な論争だったようで、すでに山ほどの資料がWebにありました。

遠山啓は水道方式でかけ算の順序にはこだわっていない。

正直な話、遠山啓氏と「3x5≠5x3」問題がどう絡むかについては、この3つのエントリを読むだけで解決します。
それだけでなく、遠山氏は「助数詞」つまり「皿1枚」の「枚」などについても教える際には避けた方がいいと考えていたようで、例題はその点からも「水道方式」ではなく「水道方式に似た何か」であることが見えてきます。

となると、その「似た何か」とは何のことだろうか、ということになります。次に目につくキーワードは「学習指導要領」です。

学習指導要領でもかけ算の順序にはこだわっていなかった。

こちらは、

に書かれています。

ただここは、たいして難しい文章でもないので、当該の小学校学習指導要領「算数(2)(PDF)」を読んで欲しいところです。

ただ、難しい文章からでも難しい部分を読み取ってしまう、ということはあるようで。
「簡単な場合の2位数と1位数との乗法」に書いてある10x4の例を「乗法の順番」だと思いこむように、書いてある例が全てだと思いこめばいろいろ読み込めないこともない。

例えば、文章題と乗法に関する部分には2つの例題があります。

「1袋に5個ずつ入ったみかんの4袋分」

(上記PDFの98ページ)

「プリンが3個ずつ入ったパックが4パックあります。プリンは全部で幾つありますか。」

(上記PDFの99ページ)

これらでは、注意深く、前の方に「1単位あたりの量」がそれとわかる形で、後ろの方に「単位数」を、何が単位なのかわかりやすく示す形で、例題が書かれています。

おそらくこれは偶然ではないでしょう。*3

そして、このおそらく偶然でない内容をどこまで深読みするかによって、例の「3x5≠5x3」がうまれる可能性が出てきそうな気がします。

個人的には、こんな明文でないところから何かを読み取ってしまう人なら、生徒が作った式の立て方の順番からも容易に何らかの意図を読み取ってしまうだろうな、と思いますが。
しかし、そんな深読みはどこまで正しいのだろうか、という疑問は持っておいてほしいな、とも願います。

少なくともここから「乗算には順番がある」と読み取るのは読み取りすぎだと思うよ。

*1:「1あたりの数」

*2:いくつ分

*3:が、必然であるとも明文では書かれていない。