亀倉雄策十回忌展に行ってきたんだが。

亀倉雄策というデザイナーがいて。
この人の名前はまあ知らなくても良いけど、この人の仕事を見たことがないのは多分生まれつき目の不自由な人だけなんじゃないか、というくらいに有名なデザイナーだ。

どれが一番ポピュラーか言うのも難しいが、NTTのマーク、明治製菓のマークあたりはものすごくポピュラーじゃないだろうか。そのほか、あのマークもこのマークも、といった感じで作ってる。中学校の美術の時間にロゴマーク作り、という授業があって、その一環で新聞雑誌チラシそのほかからロゴマークを切り抜いて持ってくる、という課題があったんだが、これ、結果的に亀倉雄策作品集になってた感じがする。

その人が作ったたぶん(大きさとして)最大の作品が、安比高原スキー場。もちろん一人で作ったわけではなくいろんな人との協業なんだけど、有名なウサギのマークをはじめとした四季のマークをはじめ、ホテル、従業員寮、リゾートマンションなどなど建物のデザイン、各名称のロゴタイプ、スキー場のゲレンデの設計からレストランのネーミングまで一切合切作っていた。

その縁で、十回忌記念の展覧会がホテル安比グランドで開催されていて、オフシーズンにもかかわらずデザイン関係の人が押しかけたりしていた。*1展覧会は今日が最終日だったので、昨日ちょっと見てきた。

で、そこで上映されていた、彼が亡くなったときに作った追悼ビデオ。生前の写真と出演したテレビで構成されていたなかに、NHKで放送されたインタビューがあった。

アメリカやヨーロッパで活動したいと思ってたんだが、それを言うと、みんな『浮世絵をやれ』という」
「あんな絵の歴史を持っていないから、あれをやればそれだけで活躍できる、というんだ」

これ、聞いていて「交換不可能な能力」とはそういう能力のことだよな、と直感的に感じた。
ところが亀倉雄策が、これに続いて言うには

「でも俺、浮世絵やりたいと思わないもん。」

結果的に彼は自分の「好きを貫く」ために、「交換不可能な能力」を突き進むことがなかったわけだ。
もちろん、彼のデザインのひとつである「大阪万博のマーク」が梅の紋に似ていることを指摘するまでもなく、日本風のデザインが全くないわけではないだろう。でも彼は彼でそういうのを避けるわけではなく、こだわるわけではなく、自分の理想とするデザインの作品を作っていったわけで、その辺を考えると、「交換可能な能力」「交換不可能な能力」って何だろうな、と改めて考えることになったなあと。

*1:まあ昨日混んでいたのはフリーマーケットジムニー祭りのせいだったと思うけど。