ドライブベルトが切れる (5日め・その3)

それは212号線のゆるい上り坂を走る帰り道のことです。突然バイクが減速し始めました。もちろんその時は理由はわかりません。エンジンかかったままですから。ガソリンだってかなり余裕あります。そこそこスピード出してましたから、数百mほど走って止まりました。一旦エンジンを切ってかけ直しましたが、やっぱり後輪は動き出しません。

なんらかの故障だということはすぐにわかりましたし、たぶんこれは自転車で言うところのチェーンが切れた状態だなとも直感しましたが、対処方法はわかりません。なにせタイトルの「ドライブベルト」というのも今調べてわかった言葉ですから。

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ちなみに事故ったのはこの地図の周辺*1です。便宜上タバコ工場が指定されていますがもちろんタバコ工場の中ではなく、道端です。

数十メートル押して歩いてはエンジンをかけてみて、やっぱり復活しないことを確かめてから歩く、ってことをしていると、道端の家から声をかけられます。「バイクが動かない」って言うと「1km先に店があるよ」っと教えてもらえました。今回のバイクはトリップメーターもきちんと動きますから、1km先、ということに希望を持って押し歩きします。日差しも気温もそれほどきつくないのが唯一のありがたさです。

1km歩いた先にはなんとなく車の解体をやっている工場っぽいところがありました。
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今mapsをウロウロして調べましたがここですね。運良くここで作業をしている人がいるので声をかけて「バイクが動かないんだ」と話すとこっちに来てくれます。エンジンをかけて、でも後輪が動かないことを確認すると「向こうへ行け」っぽい仕草をされたのでとりあえず隣の家の前に移動しました。

この時点で直してもらえるのか直してもらえないのかわからない状態です。しょうがないのでスマホでバイクの故障について調べると「タイミングベルト」の故障が多くて、これは大抵の日本のバイクショップでは取り寄せになるほど面倒くさい修理で、しかも1万円以上かかるようなことが書かれています。こりゃさっきの人も直せそうになくて「うちじゃ無理」みたいな感じで断られたんだなと察します。ちなみにこの場所はナコンパノムからは40kmくらい離れています。10時間ほど歩けばなんとかたどり着けると思い、そのまま北へ向かって歩くことにしました。

ちなみにこの決意、30分ほどでへこたれます。ここの道路は都市間国道で、1時間も待てばナコンパノムに向かうバスかロットゥーあたりはまだ走っているはずなのです。デポジット失う覚悟でバイクここに乗り捨てて、バイクはホテルの人に取りに来てもらえばいいじゃないか、そういう気分が支配的になったところで小学校を見つけます。「小学校のそば」と言えば後で見つけるきっかけになるな。ちょうど学校の向かいに雑貨店のようなよろず屋となんとなくバス停っぽいあずま屋を見つけます。えーい、ここにバイクを置いて帰ろう。
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3年前撮影のストリートビューであずま屋はありませんが、このあたりです。あずま屋にはまあだいたいこういうところにたむろしてそうな親父が2人いて、よろず屋にも店員がいました。うん、ちょうどいい。

ホテルに電話をかけて「バイクが壊れた」と英語でまくしたてます。ホテルで英語の通じる人は1,2人しかいないので少し待っていたら英語のわかる男性に代わりました。もう一度「バイクが壊れた、助けて」と英語で言っていると「今どこにいる?」という返事があったので「バーンセーンの学校」とタイ語でいいましたが通じません。まあそういうものです。だから人がいるところで電話をかけたわけで、そこいらにいるオヤジたちに「電話を聞いてくれ」と代わってもらうようお願いします。わけのわからない外人(たぶん日本人っぽい)から訛りまくったタイ語で言われて明らかにオヤジたちは引き気味でしたが、よろず屋のオヤジが渋々電話を引き受けてくれました。そこで場所を話してもらい、(おそらく)ホテルマンから「バイクが修理できるところを知らないか」みたいなことを頼まれ、電話はつつがなく終了しました。つつがなく終わったかどうかはもちろん結果論なのですが、よろず屋のオヤジは何かをたむろしていたあずま屋オヤジらに話し、私はそのうち1人の運転するバイクの後部座席に乗り、もう1人は壊れたバイクを押して移動することになったのですからほとんど勝利です。

5分と乗らずにバイクはボロ屋に到着しました。
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逆光でわかりにくいですが、まあ何か機械の部品も転がっているおよそカタギっぽくないところです。
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google street viewだともう少しわかりやすいですが、この時点では洗濯機か冷蔵庫かなにかの店のようですね。

なんだかんだで押してくれた人や送ってくれた人にお礼を言って、ここで修理してもらうことになります。
修理人は当初はオイル交換を始めます。いやたぶんオイル交換では埒が明かないと思いますが黙って見ていますと、やっぱり違ったようで今度は伝達部分を開けます。インパクトでネジを外したあとにハンマーで叩くのは正しい作法なのかな、と思いつつもきちんとカバーが外れまして、粉々になったチェーンが出てきます。
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翌日撮ったチェーンの一部ですが、これ以外は本当に粉々になってました。あとはこのチェーンの代わりとなるものを入れれば修理完了なのですが、一抹の不安がよぎります。「日本では普通バイクショップでも取り寄せになる」このバラックみたいな店に部品はあるんだろうか。

杞憂というか、チェーンそのものは壁にかかっていました。そりゃこれだけみんなバイク乗ってるんだもの、あるよなチェーン。でもバイク屋オヤジ、セッティングしながら首をかしげます。何の問題があるんだ。別のチェーンを出してきて、合わせようとしますがまた首をかしげます。本当にヤバい。

その後オヤジ、どこかに電話をかけてなにやら聞いています。うわこれ本当に大丈夫なのかわからないやつだ。とは言え新しいチェーンはセッティングされて、蓋を閉じてエンジンをかけ直すときちんと走り出します。一応は直ったようです。
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ちなみに請求額はこの通り。オイル交換が100バーツ、チェーン交換が200バーツだそうで、いやオイル交換要らなかっただろと思いつつ1万円の予定が1000円ですからあんまり不服も言わずに支払います。

でもこれきちんと切れずに走るのかな。行きのスピードの半分くらいでゆったり走ります。
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個人的に好きな風景、田んぼに沈む太陽が見られたのはいいことですが、ナコンパノムについたときには完全に日が暮れていました。

まあきちんと走ったってことはそれなりに修理のできるオヤジだった、ってことで、ナコンパノムからタートパノムの間の212号線でバイクが故障したらこの店に行けば直してくれますよ、と書いておきます。ここgoogle mapsにも登録されてないからどうやってたどり着くかが難しそうですけどね。

*1:もう少し北のほうかもしれない