シン・ゴジラについて、今さらの感想。

いや、実際今さらだと思いますよ。一応1回めは公開2週めの金曜日(つまり8月5日)に見てあれパンフレットないなと思いつつ、2回めは3,4日後の火曜日(つまり8月9日)に「映画館にパンフレット置いてあったぜ」という友人からのタレコミでパンフレット買いに出かけて、「あれこのまま見ても構わないんじゃないか?」と思って空席確認して後方中央の良席が残ってたんで観覧、という話なので2回め基準で考えたってもう1週間以上経ってますから。

そもそもこの映画ネタバレを気にするといい感想が書けない。というか一番良い感想はもう島本和彦氏がTwitterで書いちゃってる。あれ以上のネタバレなし感想はもうないですよと。見た人による一番の感想はあれです。この感想。これ読んだらもう見たことある人はうんあれあれってなっちゃう。ネタバレあり感想でもこれだけあればだいたいいい感じ。

細かいネタがいっぱいあることについてはまあ詳しい人は詳しいよね。Glory-MARUの元ネタからジャック&サリーどうぶつ病院とかその他もろもろ。こちとら初回視聴で泥かぶってたお姉さんが前田敦子だってことすらわからなかったくらいのボンクラだしなんていうかあれだけ五十音順で俳優がスタッフロールに並ぶと、ピエール瀧みたいにカタカナが入ってる俳優さんは目立っていいね、くらいの感じで見ておりました。

ゴジラが最初に出てくるあたりまで

それでも意識してネタバレ感想を見ずに、ヘタしたらネタバレしていない感想すら避けて1回めを見た甲斐はありました。もちろん冒頭でなんかトンネル事故が起こるあたりからゴジラ来るってのはあらすじ聞かないでもなんとなく分かる話なんですけど、でもってなんか歩けそうですよいや体重支えられないでしょ、え、上陸しちゃうの?な流れのところに出てくるゴジラ第2形態(とあとで聞かされた怪獣)。あれ全然ゴジラに見えないじゃないですか。前に見たゴジラっつうとハムゴジって言われてるやつで、あれが出てきた時に思い出したのはその映画でゴジラの他に箱根から狛犬が巨大化して出てくるやつ。あれの記憶はあったものだし、「ガメラ3」で「怪獣ってやたら日本を目指して来るよね」みたいな話もあったから、「あ、これ露払いでなんか軽く蒲田近辺を荒らしてその後でゴジラが出てくる展開かな」なんて思ってたんです。したらなんだかんだあって暴れた後に変形するじゃないですか。なんていうか正直変形する前のほうが怖かった感なきにしもあらずなんだけど、それは単にお互い何もしてないからなんですよね。第3形態に対してはヘリコプターが攻撃準備して攻撃しないだけ、第3形態のほうも何かしそうで何もしないで海に帰るだけ。ヘリコプターが虫笛回したのかと思った。

いずれにせよこの辺のシーケンスは本当に東日本大震災のあたりを意識してるんだろうなとは思わせるものでありました。川のプレジャーボートがわしゃわしゃ遡ってくる場面、ゴジラに押されて水が溢れて津波っぽくなって道に溢れている向こう側の逃げていく青年。遠くからスマホのカメラその他で傍観している逃げてきた人。でもってその後の視察で見えた通ったあとの瓦礫の山。あの瓦礫の山、予告編でも一瞬映るんですが、友人の被災経験者はその予告編の当該シーンチェックして「あ、これは私には見られない映画だ」と判断して観るのやめたくらいにはリアルでした。実際の瓦礫の山よりは綺麗でしたが、まあ私が見たのは津波が来てから2週間ほどたった瓦礫だしあっちは海のヘドロも混じってますから綺麗汚いはけっこう別の話かと思います。

ゴジラがいったんいなくなって、また出てくるまで

そのあと、ゴジラがいなくなって日常に戻ったところのシーン。在来線は京急のみ運休ですけど、あれ新幹線もあのへんは運休してますよねたぶん。新横浜で折り返し運転する電車なんてほかにないから。
京急以外は通常運転しています、って、放送の音声が被りますけど、ああいう音声、この辺でも聞き慣れています。東日本大震災で被災した路線が一部まだ復旧していないんで、この辺でも「東日本大震災などで被災した一部の路線以外は通常運転です」って朝のテレビの交通情報で流れるんです。たぶん地震や台風などで復旧の遅れている路線のある地域でもそうだと思います。これもなんだかあるあるでしたね。でもそういう風に言うようになったのって、震災からかなり経ってからなんですよね。被災直後は止まっているところを言う方が大切ですからああいう言い方はしないんです。だからああいう言い方をしているということはそれなりに時間が経ったのかな、と思ったのですが、その辺どのくらい時間が経ったのか明確な言及がわからないんですよね。2回めはそこを気にして見ていたのですがやっぱりわかりませんでした。巨災対できてからあまり家に帰ってない、という描写があるので、1日2日ではないとは思うのですが、そこ考察している感想、見られていないです。放射線サーベイも「ゴジラの経路と一致している」と言うためにはそれなりの数の検査が必要ですし、1週間から1ヶ月くらい経っていてもおかしくないと思うんですよね。(ただその場合半減期の問題が発生するけど)

そう、家に帰らないのもあるあるでした。うちの職場は役所ほどアレではないのですが、震災時は数日間帰れない人が続出しました。なんだかんだ言って職場そのものはほとんど被災していないので、被害にあったところ以外は一見普通の状態になるのもわかります。

で、潜水艦でも潜りきれない相模トラフで休憩していたゴジラが進化して戻ってくるわけですが。今度は万全の形で自衛隊をフルで準備して、タバ作戦。陸空の装備をフル活用してゴジラに総攻撃。でも効かなくて橋ひっくり返されて戦車数台がオジャンになって。1回め見た時には「おお、自衛隊も装備を失う表現に寛大になったんだな」と思ったのですが、家に帰ってから調べてみたら、「ガメラ」の時に墜落に難色を示したのって航空自衛隊だけなんですね。それを踏まえて2回め見たら、やっぱり航空自衛隊の飛行機は落ちてなかった。他の飛行機は落としても航空自衛隊の飛行機は墜落しません。あるあるだな(!?)。万全の形といえば、最初「俺が命令しないといけないの」と逡巡していた総理が武器無制限使用のご決断にいたってはほとんど躊躇しなくなっていたあたり、慣れは必要だし恐ろしいもんだなと思ったりもします。

多摩川渡ったゴジラが都内に入る辺りで暗くなるんですが、停電の中火災っぽい赤い火が浮かび上がってくるのも震災の時に見たような気がしました。直接ではなくヘリからの中継映像だったんですが。実際のものは相当明るかったようで、気仙沼の外れに当時住んでた知り合いは「停電で真っ暗だとおもいきや、市街地が火事だったのでその火の明かりが居間まで入りこんできてそれで夕ご飯が食べられた」と笑いを交えて話してましたが、「津波から垂直に陸の方へ自動車を走らせて逃げた」なんてことも言ってた人なのでどこまで本気で言ってるのかはわかりません。

で、グアムからやけに範囲の広い事前通告付きでやってきたB-2がバンカーバスターで攻撃。通常の兵器が効かないのはゴジラあるあるなんですがバンカーバスターはなんとなく効いた感じがするんですよね。内閣の人たちが「さすが米軍」と思ってしまうのもわかります。そこからですよね。第2の驚き。ゴジラといえば放射能火炎ですが、あれ仮に放射能じゃなくてもひどいよ。前段階の炎からしてゲロっぽい流れ方するんだもの。でもって背中から全方位にビーム攻撃。いくらビームが全方位でもかなり高高度のところを飛んでいる爆撃機に当てるのは難しいと思うんですが、出しっぱなしで広範囲をグルグル回せばどこかで当たるのかしら。2番機、3番機は仇も取れずに残念でした、つうかあれで中央、港、千代田の3区が壊滅するわけですが、NHK以外の民放TVは本社が港区に集中していますので、あのあとL字画面のバリエーションは極端に減少します(テレビ放送、全て亡くなったかと思ったら、新内閣の紹介画面だけはありました)。本当はNHKのある渋谷区も無事ではないのではないかと思うんですが、愛宕山とかあのへんの裏側になったから助かったのかな。

例の放射能火炎、現内閣の人たちもひとなぎでヘリごと潰すんですが、そこで全員乗るんだ、というのが気になったところ。あそこまで放射能火炎の情報なくて、どっちかというと広範囲爆撃から逃げるためのヘリだったから、1機にまとまって乗ってもしょうがないっちゃしょうがないんですが、もう少し早めに出ないとあれでゴジラが倒されてもやばかったような気もします。あと、あれだけ市街地が燃えたら地下だって危ないよね。

ゴジラが止まって、動き出す直前まで

都内が燃えてからL字のバリエーションが減った、と書きましたが、そこから一夜明けていろんな被害を放送がしている部分、なんとなくラジオっぽく聞こえてきます。音声の品質上FMっぽいんだけど、たぶん東京タワー近辺は災害にあっているので、あれが関東の受信だとしたらスカイツリーからの放送なのかなと。複数聞こえてきますが、あの中にTOKYO FMの声はないんだろうなと(TOKYO FMInter FMは東京タワーから放送している)。

実際、東京に大災害が起こった時のために、どこの民放系列も大阪をキー局として放送するための体制は考えています。とはいうものの想定されている災害は首都圏直下型地震くらいで、さすがにゴジラの来襲までは想定してないんじゃないかなと。新内閣の紹介ももしかしたらNHKとは言えBS放送かもしれないなと思いましたが立川なら八王子の中継局の電波を受けてるかもしれないな。

巨災対のほうも立川にたどり着いてはいるんですけど、半減したらしいんですよね。確かに2回め見たら、人数前より少ないなと思うんですけど、一番ゴジラに近いところ地上部分に主役の人がいたんで、他の人たち死ぬような場所にはいないと思うんですけどね。途中で自分の所属する官庁にでも寄り道したんですかね。1回めの時は「空飛んで行く人はみんな死んで、地上の人はみな生き残った」だと思ったんですがよくわからない部分ではあります。でもって廃棄マークついちゃってるPCは使う人のいないPCらしいんですが、リースじゃないんだ、再インストールして使いまわしたりしないんだ、とそれ聞いてびっくりしました。そんなもんなんだね。

2回め見てから色々ネタバレ感想読んだんですが、検索して見つかった中には2ちゃんねるの特撮板のシン・ゴジラスレッドなんかもあったんですね。それ見たら、2016年の3月から4月にかけてネタバレ書いてる人がいるんですね。これがかなりの精度であらすじそのままで。ほぼ内部リークですね。何の話を書いているかというと、これが内部リークだった場合に、本編から消えている内容があるんです。

高レベル防護服に身をまとった陸自環境庁のレンジャーによる生体細胞の回収。サンプルは筑波のBSL4対応施設に。残りは官民を問わずP3レベルに対応可能な研究所に送られる。
送られてきた厳重に密閉されたサンプル金属容器を開けて驚愕する研究員たち。サンプルがすべて外胚葉由来の眼球や歯に変化していた。一方で都内被害地でサンプル収集中のレンジャー達は、融解した建造物の壁面一面に体組織細胞が一斉に変化した小さなゴジラの頭部がびっしりと生えているのを目撃する。

前半部は本編に残っています。つくばに送るだけでなく、扱えるところは全部使う感じの場面。後半の細胞変化は画面としては残っていません。壁にゴジラの体細胞の一部と思われるものが映るシーンや、「群体に変化する可能性」という話はありますので、このあらすじがリークされた後にシーンが変化したのか、そもそもこれを書いた人がフェイクを混ぜたのか。どちらにせよ、このシーンがあるとホラー感は増すものの頑張ってる感は散漫になるような気もするのでなくなって正解の場面だったと思われます。

それにしても休眠状態でも1Svを撒き散らしているゴジラに対応できる高レベル防護服ってあるんだろうか。1Svって生身の人間なら即死レベルの放射能ですよね。この辺、本当に311後でみんなが放射能情報に晒されたからこその説明の省略だなと思いました。

寝ているゴジラが起きるまで15日間なので、2週間で東京の360万人を避難させる、ってありましたが、東京23区で通常時900万人いますから、ゴジラが来た時に既に避難をはじめていたのか、3区壊滅で500万人以上死んだのか、それとも避難区域が限られているのか。その辺の組み合わせだとは思いますが、福島県の人口が200万人です(さらにそのうち、県外避難者は6〜7万人しかいない)から、東京が実際災害にあったときに日本がどこまで耐えられるのかはシン・ゴジラを見てもわからないですね、本当に。

いずれ行方不明になった教授が残したデータというのは解読不能のままで「なぜ紙で残したんだ」「なんか折り線みたいな気がする」っていう言葉から設計図を折り紙で折って解読するんですけど、その折り紙が別に書かれている折り線で追ってないんですよね。あれどういう折り方で解読したんでしょうか。船に残ってたのは折り鶴だけど、設計図折って作ったのは魚の基本形だったし。まあいいや。この辺から謎解きがスピードアップして、それを追いかけていくだけでいっぱいいっぱいになりますから。実際世界中のスーパーコンピュータを連携されて得られたものが「活動抑制剤である極限環境微生物」なのか「ゴジラに寄生している極限環境微生物の活動抑制剤」なのか、ネット上でも表記が分かれていて。(Wikipediaは前者としてあらすじをかいているが、私は後者として受け取った。)さらにヤシオリ作戦の準備をするにあたりあちこちから協力志願だの練習中だの修理完了だの話が出てくるのですがこれらの話ここまで一回も出てこないものに対する言い訳(この後にどういうものが出てくるのかの計画を話している)なので、何を話しているのか1回めはさっぱりわかりませんでした。2回めは、ああ、あれの準備かとわかったのですけれどね。

寝起きドッキリでゴジラが凍るまで

そう。アレの準備というのが、無人攻撃機で無駄弾打たせて、新幹線(無人)で大爆破して、東京駅の周りの高層ビルに爆弾を仕掛けて倒して転ばして、ってところ。テンポよく見せるためにけっこうなスピードでポンプ車動かしてますが、あんなに高いところに放出口持っていくのはあそこまでのスピードで出来るのかな、とは思いますよね。1回反撃されて部隊が全滅したら、今度は無人在来線爆弾を絡ませてトマホークで別のビル壊して倒してまた転ばして、別の部隊がまた、ってなところ。人によってはあのへんの動きが「うそ臭い」とか「チャチ」と感じた人もいると思います。1回めはびっくりしたシーンなのですが、2回めはちょっとアラが見えたシーンでもありました。うちら911の時にビルが倒れるとどれだけの土煙が立つか見てますからね。あんなにクリアに見えるかな、ってこと考えても、本当はもっと時間がかかっているんだろうな、と思わないでもなかった。

ゴジラを攻撃するのが、空からだとみんな東京湾方向からなんですよね。基本あっち方面を攻撃するのであっち方面の放射線データが大変なことになるんですが、きちんと数字読み取った人によると20Svを越えてたとか。いくら半減期20日でも当分の間コミケは開けないんだろうな、という気持ちになりました。あと未知の放射性元素だと、α崩壊でもβ崩壊でもどこぞの崩壊系列に含まれていくような気がして、さて本当に2〜3年で大丈夫なのかはさらに気になったのですがそれは誰かが考察してくれるのでしょう。

あとね、野村萬斎がふりをつけた、っていうけれど、しっぽ以外のところが動いているのあんまりわからなかったんで、2回見てもこれの中の人が野村萬斎だとはちょっとわからなかったなあ。

まとめ

途中にいろいろ疑問が入ったところもあるのですが、まあどれもこれも些細なことなので見てて楽しければいい、というか、ここ数年日本の映画館では映画見てなくて、見てたのは設定を聞いただけでラストまでの大体のあらすじがわかってしまうようなタイ映画ばかりでしたので、数ヶ所含まれる驚きは大変新鮮ではありました。地元の被災者にも見られない人がいることも書きましたが、それだけリアルな証拠、ということで、時が経ってから見られるようになればいいな、と思います。本人はDVDかBD入手して、当該シーンは飛ばすつもりで見る予定らしいですし。