なんか、enchantMOONの新バージョンが出るらしいですね。今まで持っていた人もソフトウェアアップデートで新製品と同等の内容が受けられるとか。
リンク先にはenchantMOON開発の偉い人であるところのid:shi3z氏がいろいろ経緯とかそういうものを書いているのですが、まあ長い。その上宣伝も兼ねているので美辞麗句が並んでいます。
私、過去のエントリを見てもわかるとおりenchantMOONの購入者です。やはり、こういうコトに関する文句は買った人だけに言える資格があるのではないか、そういう気持ちでそのエントリを読み下してみようと思います。
読み下すにあたって、採用する仮定は以下の3つです。
- 不利なことは書かないことはあるかもしれないが、嘘は書かれていない。
- いろいろ裏事情が読み取れる場合は、一番下世話な理由を想像する。
- 過小表現、過大表現もあるかもしれないが、一番セコい方向の内容を想像する。
これは、書いた本人の性格を知ってそうした、とか、過去の経験から割り引いてみよう、とかいうものではなく、上記エントリが広告的な性格を併せ持っていることから採用する仮定です。一般的にも、「Available」と書いてあったら「正式機能ではなく別売りオプションで対応なんだな」くらいの読み替えはしますよね。つまり、そういう読み方をしてみる、ということです。
名称と、立ち位置について
S-IIの正体はOSのアップデート2.9.0である。したがって、新機種並に新しくなっているが、旧機種のユーザは自宅でMOONPhaseを2.9.0にアップデートするだけで完全に新しいenchantMOON S-IIを手に入れることができるようになる。
まず、「新機種並に新しくなっている」割にはVersionの上がり方が微妙ですね。新機種にするなら3.0.0にしたくないのかな?といったところが気になります。
実際、EnchantMOONの公式サイト上では
3.0ではユーザーインターフェースを含めて大幅な機能強化を行う予定ですが、3.0の開発の前段階として、現時点でのユーザーインターフェースのままで、全体的なリファクタリングを行っておくべきだと判断しました。
などと書いてあります。その結果が2.9.0だとすると、まあ最悪の場合「3.0は今の機械では動かないよ」と言い訳するための2.9.0という番号という可能性もありますね。
もはや敢えて言うまでもなく、enchantMOONはアポロ計画になぞらえた進行をしている。
確かに、アポロ計画になぞらえたネーミングはありました。OSにSaturn-V,Eagle,Columbiaといったネーミングが入っています。とはいうものの、Saturn-Vはともかく、残りの2つはアポロ11号特有の名称。アポロ計画はそれまでに11回*1のミッションをこなしているわけで、それを考えると、今度のS-IIは名称としては初めてSaturn-Vが打ち上げに成功したアポロ4号未満。
となると、この言葉は「最初に思っていたよりも後退していた」ことを認めている、もしくはこれまでがビッグマウスだったことを修正しているのかもしれません。
そこに到達するには、第三段ロケットであるS-IVBシーケンスを待たなければならない。
第三段ロケットが点火しないと月にはたどり着けません。つまり、「『S-II』では求めている『月』には達せない。」と言うことなのでしょう。誰にとっての「月」への到達かわかりませんが、新製品への限界を認めた言葉だと思われます。
個人的には、HTML5でenchantMOONのコンテンツを再現するGeminiとクラウドサービスSkylab(コードネーム)の登場によって、
なんか2つほど新しい言葉が出てきました。アポロ計画になぞらえればGeminiはアポロ計画の前の計画、Skylabは月着陸後の次のアポロ計画のミッションなわけで、時系列が全くバラバラですが、まあそこは気にしないことにします。
特に会場では触れなかったが、GeminiではMOONBlockによって作ったゲームソフトをPCやiPhoneなどで再生することも可能だ。
冒頭でも書きましたが、「可能」という表現がされているときは「とりあえず動く」的な意味だと思っていたほうが良さそうですね。「動作確認は出来る」くらいの意味でしょうか。
つまり、作ったゲームを9leapへ投稿することもできる。
ここが面白いですね。
ここまでに「enchantMOONのコンテンツをPCで再生する環境」と「enchantMOONとクラウドを何かするサービス」の説明はあったのですが、「enchantMOONのコンテンツを外部サービスにアップロードする方法」の有無については全く言及されていませんでした。
ところが、これを書いている人はこのサービスが当然のようにあるものだとして「つまり」と言及している。本人の中では既に説明したつもりでいるっぽい。
ということは、「クラウドサービスSkylab(コードネーム)」とは「9leap」とほぼ同一の存在なのでしょう。どこがどう同一なのかはさっぱりわかりませんが、本人が説明した気になっているわけですから、「理論上は同一」くらいの可能性はあります。
実は今回、Skylabの開発には、僕の古くからの友人であるenfourのリチャード・ノースコットが関わっている。(中略)
リチャードは、世界で初めて発売された手書きコンピューティングデバイスであるAppleのNewtonで最も活躍したプログラマーの一人
ここも興味深いところです。先述されているように、Skylabはクラウドサービスです。そこに求められる機能と、enchantMOONやNewtonのような「手書きデバイス」にどのような関係があるのでしょうか。しかも、その直後に、彼が日本語の使える手書きコンピュータでどのような貢献をしたかまで詳細に書かれている。
そこまで自慢するなら、なぜ手書き部分ではなく、クラウド部分に関わっているのか。非常に興味深いです。
ちなみに、
パートタイムだけれども、我々に取って非常に心強い味方であり、
「可能」が「動作確認は出来る」レベルだとすると「パートタイム」は最悪「1度遊びに来て名前を使わせてもらった」の可能性すらありますが、そこまでの表現は広告でも誇大表現がすぎるのでそういう邪推はよくないと思いますよ、ええ。
機能について
今回、ラスター処理をメインにするため大掛かりな変更をしているが、同時にベクトルデータの取得も捨てていない。世代別JSON方式を採用したため、ベクトルデータの扱いそのものはやや複雑になっているが、基本的には変わっていない。
もともと、これまでのenchantMOONでもページはラスタライズされていて、それが全て保管もされていました。「大がかりな変更」で「ラスター処理をメイン」としたとなると、あのラスタライズされたページは使われていなかった?という疑念も浮かんできます。
あと、世代別JSON方式って、私初めて聞いた言葉です。検索したらここ以外で言及されているページを見つけられませんでした。たぶんそのうちこのエントリが2番目になるんじゃないかと思います。
最高速のレイテンシーを達成するために、新たにpenコマンドを追加(β版のみ/製品版ではMOONBlockで対応予定)し、フラットペンとノーマルペンを切り替えることができるようになった。
MoonBlockで対応、ってことは、「シールで部品を作らないと使えない」ってコトですね。evernote共有機能を使って共有したページ全てにevernoteのシールが貼ってある、なんていう対応にならないといいですね、としか言えません。
というか、入力の根幹に関わる機能を外部アプリで対応、って、なにかレイヤーが違う気もするのですが、その部分をサラッと言えてしまうところにたぶん何か謎が隠れていそうです。
はい、ここは「TruNote 評判」で検索するところですよー。
「紙の再発明」とまで持ち上げたenchantMOONを、現行の他タブレット機と比較して比較優位なのでOK、とする。そうか、そうなんだなと思って涙をそっと拭いましょう。
価格について
それに伴って値上げした理由は、発売から8ヶ月余りの間、薄利にも関わらず耐えて耐えて耐えぬいてenchantMOONを売って下さった販売パートナーの皆様に多少なりとも利益を還元するためだ。そして、既にenchantMOONを買って下さったお客様に対しては、触っていただければこのソフトウェアに1万円相当の価値があると解っていただけるはずだと思っている。
いやー、こんなコト書いちゃっていいの?って思いますよね。ここの2文合わせて「値上げ分は小売店の儲けですよ」って言ってるも同然です。
だって、「既存の客にはソフトに価値があることがわかる」つまり、「既存の客」限定で書くって、「新規の客にはソフトに価値があるかわからないかもしれない」という前提がなければ書けない言葉ですよ。
それに、これまでの彼だったら「実際に店頭で触って頂ければ……」と書いていたはずです。実際、そのために通販だけでなく、店頭販売もはじめた訳ですから。
ほんとうに、読み返すたびに胸の熱くなる言葉です。
そして、再度値上げの理由について、ですが、
販売パートナーさんたちが少しでも利ざやを稼ぐことができるようにする
既存のenchantMOONは飛ぶように売れている、というわけではない
最初期からenchantMOONプロジェクトに関わるための最後のバス
3つの理由から、この3つを抜くと「閉店売り尽くし現品限りの大セール」に見えてしまうところが趣深いです。もちろん、moonPhase2.9.0に希望が持てる人には、割安に新品を買える最後のチャンスな訳ですが。
次世代機について
初代enchantMOONのこのユニークな形状のモデルは、たぶんもう増産しない。製造トラブルが多過ぎるし、工場との契約も打ち切った。金型は回収し終えている。したがって市場にある在庫が全てで、今回、我々はenchantMOON S-IIで儲けようという気持ちは全く持っていない。
ハードウェアの作られ方やライフサイクルを考えると「増産しない」ではなく「増産できない」ではないかとも思うのですが、別に本人らに増産する気がなければ「増産しない」でいいのです。それよりも、ここでまた「儲けようと思っていない」と繰り返すことで、値上げ分がどこに行くのかさらに強く語られてしまった気がするのが気がかりです。
ここ追記:
値上げ分がほぼ全て小売店側に行く、というのは、「売れなければ小売店の責任で安売り出来る」ということでもあります。もし仮に本当に値上げ分がほぼ全て小売店の物だった場合、そしてもし仮に値上がりしたS-IIが在庫になった場合、誰がどういう責任で値下げに踏み切るのか、そして、仮に売れたとしても、小売店同士で価格統制などしていない状態で価格はどうなってしまうのか、いずれにせよコワい話だなあと思ったりもしました。
--追記ここまで。
新たに設計する新ハードウェアMkIIは、全く違うものにしたいと思っている。
少なくとも、エセDockコネクタみたいなよくわからない仕様にはしないでもらいたいものです。ハンドルよりもあのコネクタの方が謎仕様でした。噂によると、あのコネクタにした技術的かつとても下世話な理由があるらしいのですが、そんな理由が新ハードウェアに波及しないことを祈ります。
まとめ
正直この半年でenchantMOONはアップデートの時にしか立ち上げていないっていうか、そんな暇があったらパズドラやってたんですが、このエントリ1つで魔法石680個分くらいの楽しみにはなったかなあと言われれば正直微妙なコンテンツでした。まあそのほかいろいろ含めれば魔法石200個分くらいは楽しんでると思います。*2
これまでに書かれていることを総合すると、いったい何台用意されているのか皆目見当つかないのですが、enchantMOON S-II、売れるといいですね。小売店のためにも。