enchantMOONが来たのでいろいろさわってみた。

以前から、「究極の人柱デバイス」と言われていたenchantMOONをわざわざ予約購入したら、この時分になってやっと届いた。ちなみにシリアルNo.は400を超えていたので、大量生産第1弾の最初あたり、ということになるのか。

そんなわけで、既に届いた人も多く、いろいろと辛口なレビューも書かれている。

困ったことに(もしくは、嬉しいことに)、これから書くことは、ここに書かれている辛辣なレビューに反論するものではない。というか、使い勝手やら付属品のひどさやら造作のずさんさについては、これらのレビューとほぼ同感である。

まあ、さわってみて昔同じようなわくわく感があったなあ、ということを想いつつ、スクショなど貼りつつ感想を書いていこうと思う。

モードなしでモードを切り替えるのは難しい。

とりあえず「手書きできるポメラ」方向での可能性を探るために、文字をいっぱい書いてみた。
文字を書くだけなら、それほどフリーズすることもない、はずなのだが、時々認識が引っかかる。だけでなく、ペンを離したとたんにパーツを貼り付ける画面が出てくることが多い。

おそらく、パーツ貼付画面への遷移コマンドが「タッチパネルを長押し」だからなのだろう。

enchantMOONは掌をついた状態で文字や絵を描くことが出来ます - UEI shi3zの日記
なーんてことを宣伝していたが、実際のところ調整レベルでは万人に実現するのは難しかったわけだ。
これが、「タッチパネル長押し」でなく「タッチパネルで特定のジェスチャー」ならまだ何か調整の余地はあるとは思うんだけど、「長押し」って簡単な操作でどこを調整すればこれが解決できるんだろう。

ちなみに、手のひらをつかない状態でペンを走らせてみると、ペンの引っかかる確率がかなり減るのがわかる。やっぱり、パーティクル光らせすぎなんじゃないかなあ。

真ん中以外に文字を書くのは難しい。

こういうペンを使い慣れていないのだけど、まあいっぱい書いた。

一生懸命書いて、とりあえずタイの首都名がギリギリ1ページに収まるくらい、か。
なお、下に貼ってあるのは、最初の1行を文字認識してみた結果。このくらいのくせ字でこのくらいの認識率です。
ちなみに、漢字仮名交じりの文だと、この大きさではさすがに書けない。

ちょっと大きめになるか。

さらに、端、特に右端のほうに文字を書くのは難しい。手がパッドから離れるからだ。この厚みだと、紙よりも厚いと言うことが裏目に出る。

文字認識は1行だけ。

最初の1行、と書いたが、何か検索したいなら1行に収めないとまともに文字認識しない。

見ての通り、1行単位なら普通に認識している。でも、これを全体で囲うと全く意味不明な認識になる。ということは、先ほどのタイの首都名はフルネームでは検索できないことになる。

筆記体は書きやすいが、タイ文字は書きにくい。

レビューにもあったが、筆記体はなんだか書きやすい。久々に書いたのに、そしてこのくせ字なのに、美しいなあ、なんて思ってしまったくらいだ。

逆に、タイ文字はうまく書けない。もともと金釘流以下の文字なのが、途中で変に引っかかって文字以下のものになったりする。

なんとか書いて、この程度。練習帳代わりにはちょっと使えないかもしれない。

もちろん、タイ文字は検索には使えない(文字認識は日本語と英語だけ、という仕様になっている)。

スクリーンショットの意味がわからない。

いちおう、スクリーンショット(png形式)を取れることになっている。そのためにデジタイズペンには専用のボタンもあるし、専用の操作もある。
でも、書いている途中の画面って、jpeg形式で自動保存されているんだよなあ。ファイルサイズもそれほど変わらない。

さらに言えば、スクリーンショットを使える場所もない*1ので、スクリーンショットは母艦につないで吸い出してからしか使えない。
それなら、サムネイル一覧で選択してスクリーンショット化するくらいの遠くのインターフェイスで十分だったのではないか。デジタイズペンにある2個しかないボタンの一つを使うほどのものとは思えない。

ちなみに、スクリーンショットのボタンの反応も悪い。コツがいるのか、ただ反応が悪いのか見極められないのもつらい。

母艦に繋ぐ、と言う話でいえば、なぜこんなDockケーブルにそっくり、というか刺さってもおかしくないくらいの専用ケーブルにする必要があったのだろうか。ケーブルも4ピンしか生きていないし、そのピン配置もiPhoneとは違うっぽい。こんなの充電兼用のmicroUSBでいいだろうと小一時間問い詰めたい

ピン配置だが、iPhoneのdockケーブルは1,2,15,16,29,30がGND(それぞれ役割は微妙に違う),4,6がUSB DATA,8がUSB Power。enchantMOONのそれは30,28,27,23ピンのみが生きている。端をGNDにするのは礼儀として、28,27がUSB DATA,23がUSB Powerだろうか*2。ピンアサインを180度間違えたにしては微妙にずれていて、本当になんでこうしたのか判らない状態だ。

なお、iPhoneのdockケーブルの28,27はAudio OUT,23はcomposit OUTだそうだ。iphoneのUSB通信ケーブルを間違って挿してもenchantMOONは壊れなさそう。逆はどうだろう?無事であることを祈りたい。

専用ペンの扱いがおかしい。

ペンがないとほぼ全ての作業が出来ないのに、ペンをしまう場所がないのはかなりおかしい。

デザイン的にないわけではないのだ。このくぼみ。ここに物理的に引っかけたりくっつけたりする場所を作るだけでも違うはずだ。

さらに、電池のせいでペンそのものの重心がおかしいのは厳しい。おそらく重心はこのペンのクリップの先あたりになる。デジタイズペンという性格上ボタンとデジタイザの位置を離すのは難しかったのかも知れないが、ボタンを上にしてでも電池は下の方に持ってくるべきではなかったか。

さらに言えば、スタイラスペンの電池の保ち時間がどこにも書いてないのはどういうわけか。まさか半永久的に保つわけでもあるまいに、保ち時間については調べてない、なんてことがあり得るのか……ありえそうだな。

変なドライブがある。

母艦に繋げばデータ全部バックアップできるらしいので、繋いでみた。
なんでかわからないけど、ドライブが2つ認識された。内部にMicroSDスロットでも飼ってるのかしら。

2つあるほうの片方は本体で接続操作をすることで、ドライブ名が「enchantMOON」になります。こうならないと中身が見えない。
何か変換プログラムでも動いているのかもしれない。ただ、見えなくても充電は出来る。

もう片方はそういう操作をしても特になにも起こらない。やっぱり内部にあるMicroSD(ry

認識されたドライブには、6つのフォルダがあった。android_secure,App,Data,DCIM,LOST.DIR,Screenshotsの6つ。このうちandroid_secureとLOST.DIRは空だった。Screenshotsは撮ったスクリーンショットPNG形式で入っている。DCIMは画面がjpegで格納されている。ファイル名はなんかランダムなIDが付いている感じ。AppにはmoonBLOCKというフォルダがあって、その中にはenchant.js関連のいろいろなスクリプトやサンプルデータが入っていた。

で、Data。さらに1段フォルダを掘ると、ランダムなID名前のフォルダがいっぱいあって、これが先ほどのjpegファイルの名前と関連付いている感じ。おそらく、こちらがデータの本体、jpegはサムネイル的な利用に使うのだろう。

このフォルダにはinfo.jsonというファイルがある。これはこれらデータの表示順が入っているようだ。

各フォルダには、さらにフォルダが含まれているが、フォルダ名はやはりIDっぽいランダム名。そのほか、info.jsonとstrage.jsonという2つのファイルがあって、strage.jsonは自分が使う範囲では空だった。info.jsonには各フォルダの属性が書かれているようで。

ここまで辿れば、あとは中を見られる人はストロークデータとか取り出して遊べるかもしれない。

enchant.jsだって?

そういえば、自分も昔enchant.jsでサンプルプログラムを作ってみたことがあった。これを実行してみたらどの程度enchant.jsがこの機械で使い物になるかわかるんじゃない?ということで、こちらのサンプルを実行。さすがに実行する際にenchant.jsは最新の0.7.0に入れ替えて。

……遅いなー……。

ボール20個でスピードダウンが見えてきて、50個も動くとはっきりと動作がもっさりしたのがわかる。単純なオブジェクトの表示50個でこれだけ遅くなるとなると、作れるプログラムはそれほどスピードに依存しないモノにせざるを得ないだろうなあ。

では、何に使えばいいのか。

ここまで数時間使っている限りでは、適当な文字を書いて、文字が認識できるか試す、というのが一番楽しかった。google検索から先のページが見られる保証はないし(というか、本当に読みに行っているのかどうかほとんどわからない)、web閲覧はあくまでおまけ、という処理速度でもある。

文字認識を試して遊ぶって、20年以上前のザウルスかよ!って気持ちなんだが、ザウルスはザウルスできちんと文字認識したし、それ以外の入力手段もあった。なかったのは感圧ペンか。おそらく、このデバイスは落書きの練習に使うのが一番いいような気がする。

練習だけならチラシの裏でいいんだけど、このデバイスならすぐに消せるので。
ただし、間違えてスクリーンショットを取ると、そちらは母艦に繋ぐまで消せなくなる。

*1:なんとかって機能でプログラミングすればその限りではないのかも知れない

*2:USB充電は可能だった。PC経由、1時間で59→63%位に充電されていた