事前に決めておかない言語で会話は出来るのだろうか。

ビルゲイツの面接試験−ジャンケン編 解説のことだが。

ビルゲイツの面接試験−ジャンケン編

 あなた(=Aさん)とBさんにジャンケンを連続で1000回してもらいます。あなたもBさんも、パーで勝つたびに500円、チョキで勝つたびに200円の賞金を主催者からもらえます。グーで勝ったり、アイコになった場合には一円ももらえません。この条件で、あなたの賞金を最大化するために、どんな戦略を採りますか?ただし、Bさんと前もって相談することはできないし、試合中はしゃべったり身振りで合図を送ってはいけません。表情も見えないように、ミラーガラスのヘルメットを被ってもらいます。試合中に見えるのは相手が何を出したかだけです。

1000回、というのはある程度すりあわせが出来るように、という前提だろう。
これが10回だと、カイジの「限定ジャンケン」と似た話になる。アレの場合、あらかじめ戦略を打ち合わせていても裏切る効果が大きすぎてカイジはあっという間に負けてしまった。*1

打ち合わせなしで100回でも、ルールが決まったときに勝負が終わりそうだ。だから1000回なのだろう。

ところで、自分の意志をゲーム中の行動で示すことは可能なのだろうか?
自分はこれはかなり限定的だと思っている。もちろんゲーム理論ではこういうゲームの場合、しっぺ返し戦略が有効であるとされている。そのうえ、解答編にはゲーム理論では答えが出ない、なんて書かれているが、解答編に書かれたのはまさにゲーム理論で言うところのしっぺ返し戦略そのものだったりする。*2

でも、ここで書かれたしっぺ返し戦略は「相手も同じルールで戦っており、目的も同じで利益を最大化するということ」という時にだけ使える戦略だ。相手が負けるつもり(実はこのゲームは接待)である可能性が否定できなかったり、はなから全くのランダムでしか出していなかったり、実はゲームのルールが違っていたりしたら最適解ではない。

さらにいうと、相手がこのしっぺ返し戦略を理解していれば、相手もハナからグーパー交互に出す以外の手は出してこないだろう。そうすると、結論としてグーパー交互に出す、という解は解の表現としては不十分だが行動としては十分に正解である。相手がどういう風に考えてこう行動しているか、自分は行動から読み取れるし、相手も行動から読み取る能力がある、というのがこのしっぺ返し戦略の前提なので、「グーパー交互に出すよ」と言った人からも、その行動からそこまで読み取らなくてはならない。ところが今回の解答編ではそれは不正解とせざるをえない。ここにまたパラドックスが生じる。

ちなみにお互いにグーパー交互、相手を信用できるなら行動としては最適解だが、その前提でも、初期値が決まらないと利益は0になる可能性がある。あれだね、道ですれ違おうとしてお互いに同じ方向にずれてしまう場合を思い出して頂ければ。そこまで読んだうえで、相手をある程度信用するのなら、グーパーランダム、という答えも答えとしてはありだろう。ま、これはパラドックスという今回の話に合わせて作った詭弁だけど。

ゲームが違うルールで行われている、というのは今回の考察ではさすがに除外するだろうけど、この話を現実に適用するならそこまで考えなければいけない。それが嫌だからアメリカはグローバルスタンダードって連呼してたんだろうと思うけどまあそれはそれとして、そこまで言わなくてもボードゲームで「ルールの理解が間違っていたので途中でトラブった」って話はよくあるよね。それに、これを面接ネタに使うのなら、相手の理解しているルールが間違っているという可能性を先に挙げてつぶさない人は「机上の空論にはまる可能性あり」という扱いをされちゃうんじゃないかな?

ま、結論としては一言「はいはいしっぺ返し戦略しっぺ返し戦略」だよねこれ。

追記:
「ビルゲイツの面接試験−ジャンケン編 解説」に納得できない人の戦略はある意味正解だろうな、グーパーを入れる割合を相手の手に応じて変更出来る*3なら。

追記2:
よく見たら

二人で結託してパーとグーを交互に出し合って25000円ずつを得ることができる

って書かれていると言うことは、もともとこのゲーム、100回を想定してた可能性すらあるな。*4ルールは事前に提示されていても、提示した本人にすら理解されているとは限らないという

*1:最終的に負けなかったのは基本ルール外のルールを駆使したからだ

*2:言葉で説明したことが間違っている、というのは「相手の理解しているルールが違っているかもしれない」という疑念を持つのに十分だ。

*3:相手の手に応じられるか、どうかが難しいけど

*4:ごめんイヤミです