テレビ編成のロングテール化

昨日の続き

YOUTUBEが教えてくれたこと2〜次世代テレビのイメージ〜に関して、

  • キーワード検索は面倒くさい。
  • みんなのおすすめはたぶん2割くらいしか満足出来ない
  • でも、内容とかおもしろさを判別する人は必要だ

てな話を書いたのだけど、実際にどうやるか。ちょっとばかしその例を考えてみる。*1

たとえば、会員登録した人ならPC上でショートフィルムを次々見られるサービスを作る。ここに登録された動画が、実際に動画テレビサービスに流れる動画になる。このサービスで見た人が、適切なタグをつけて、さらにおもしろさを評価する。*2ていうかこれサービスっていうけど、実際には仕事の一部。*3だから、

  • このサービスではビデオの保存も出来ないし、
  • 他人に見せるためにビデオを転載することも出来ないし、

場合によっては

  • ある程度を限度として、能動的にクリップを選択することすら出来なくなる。

かも。そのかわり、

  • ビデオクリップに関して、何かのIDをつけてブログみたいなサービスでお勧めすることは出来る。

ことにする。
この後でこのブログがアフィリエイト的役割を果たす可能性もあるから、けっこう大事よ。

このモデルの解決すべき最初の問題点は、ここにどの程度優秀な人を集められるか、ということ。まあ、いわゆる限定試写会みたいなものなので、そういうのが好きな人が「好きこそものの上手なれ」的に入ることは期待出来るかもしれない。

さて、この結果、お勧め度がある程度以上あるものについては、テレビ向けに配信される。送る手段はいろいろある。マイナーっぽいものや即時性の要るものはオンデマンドで送っても良いし、何らかの理由で人気があるとわかっているならIPマルチキャストで定時配信とかCSデータ放送とかそういう手段もあるかもしれない。地上波やBSの放送に何らかの方法でクリッピングデータを付加しただけかもしれない。
テレビで観る人は、ここで付けられたタグによてジャンル分類されたチャンネル設定でだらだら見る。それは「アニメch」「ドラマch」かもしれないし「非モテch」「これはひどいch」かもしれないし、「北海道ch」「ねこch」「ラーメンch」かもしれない。別にch数に制限を付ける必要は少ないから、たぶん2ちゃんねるの板の数のようにどんどん増えていく可能性はある。もちろん「人が把握出来る範囲」という限度はあるだろうけど。あと、単純にお勧め度が高くて、プレビュー数の多い動画を中心に流すチャンネルは、初期設定のベイズ判定利用用途的においておいたほうがいいかもしれない。*4

クリップは、最後まで見る価値がないなとわかればスキップしてもいい。「低額だけど従量型」の有料視聴モデルをとるなら、視聴者としてもつまらない番組はさっさとスキップしたほうがいい。ある程度に達しないでスキップしたことをもってすなわち「つまらない」「おもしろくない」「タグが適切でない」等のネガティブな評価として利用する。*5この辺は個人差があるだろうから、ユーザーごとにどういう傾向があるか解析出来るとよりいいかもしれない。

ほぼ全て再生をしたクリップの名前と代表的スクリーンショット(これも先にPCで見た人がどこが代表的なスクショか登録しておくんだけど)は手元に保存しておく。まあ全てじゃなくて過去10個とか過去10日分とかでもいいけど、その辺は容量次第。後で他人に見せたいものがあったら、履歴をたどってチェックを入れておくと今後も保存される。で、これは保存に使うだけじゃなく、その人の好みということにも当然利用する。*6

全再生されたり保存チェックをつけられたりしてテレビ視聴者から高評価されたクリップをPCからお勧めした人には、適切なタグを付けて誘導した、多くの人と同じような感性の持ち主、ということで、それなりに報酬を与える。報酬がある程度コンスタントに出るような人だったら、○○セレクションch、という形で独立したchを作る方向で。そして、最終的にはテレビ視聴者もタグチャンネルから好みのセレクションchに収斂していく動きを作る。
そのために、こういうセレクションチャンネルを多数作るのがこの人たちにとっても必要だし、こういう人に優先的に試聴用ビデオクリップを回すようにすることも必要になっていくだろう。

ビデオクリップの再生数に比例して、動画を投稿した人にも報酬を与える。とりあえず有料視聴モデルとして、

  • 1日1時間程度の実視聴時間*7
  • それを月20日見て月3000円くらい。

の完全従量制の値段設定、を仮定してみる。ある程度定額部分がないとシステム組んでいる人が死ぬ可能性が高くなるけど、まあそれはそれとして。

1時間あたり150円、これを原資として10分のクリップに1視聴者あたり10円くらいを報酬として払うとすると、たとえばyoutubeでそこそこ人気の1000視聴で考えれば1万円の報酬、という計算になる。テレビ視聴率1%は60万人(世帯)とか言われるらしいが、この場合で計算すると600万円。(まずないと思うけど)もし再生視聴率20%なら10分のビデオに1億2千万。この金額が収入として期待できるなら、プロの進出するメリットや、古いビデオを預ける動機も生まれるんじゃないか。
残りの90円〜100円のうち、そのうち三分の一弱、20円から30円がタグ付け者への報酬原資となるか。複数人で割るので1人1視聴あたり3円くらいになるはず。若干少なめだが、動画制作とその評価作業のバランスを考えるとこの辺じゃないかということと、個々がセレクションchを持った場合の収入を期待していただく、ということにしたい。あとは、いち早くビデオが見られることを勘案して頂くか、それでも安いとなると各者の分配率をもう少し考える必要があるかもしれない。まあこの辺は概算と言うことで、きちんとした配分は各自考えていただくと言うことで。

ところで、このセレクションchにはCMを入れる。クリップ2本か3本あたり最大1分程度挟み込むくらいの量がいいんじゃないかと思うけれど、本数やCMの内容はセレクションchの責任者が事前情報を元にある程度決める*8。セレクションchはある程度内容にぶれがなく、固定ファンがつくと言うことでそこからセグメント化しやすい上に匿名ながら構成もわかっており、さらに次の動画への期待からスキップされにくいことを考えれば、CMを売るセールスポイントが見つかるはず*9。このCMの売り上げからCM営業へのインセンティブとして少しだけ天引きしたあと、システム運営の人とセレクションchの責任者が半分ずつ山分けする。この時点でタダの動画好き引きこもりだったタグ付け責任者は映像選定のプロとなり得るわけで、かつ視聴者にとってもセレクション責任者が自ら選んだCMを見るという行為がこのセレクション責任者へのリスペクトとなる。

あと、これはさらに思いつきだけど、これがうまく回るなら、ビデオ選定、ビデオ制作、CM営業を一体化することで、何かのセールスプロモーションにも使えるんじゃないかな、とは思う。つまらないプロモーションをやればやるほど信用を失うから、それは程度次第だとは思うけど。

というか、これら、ソーシャルブックマーキングの手法と今の地上波テレビの手法をちょっと変形して組み合わせただけ。思いつきのセールスプロモーションの話はテレショップのことだし、CMの挿入量もだいたい一緒。違いは、動画を評価する人が出勤して仕事するか、自宅で動画見ながら仕事しているかくらいだったりする。動画をチャンネルで分けるのも別に目新しいモデルじゃない。「面白い」「怒る」「悲しい」「楽しい」で分けたらそれは「第2日本テレビ」になるわけだし。ただまあその分類をコーナーごとじゃなく動画ごとでやるところはもしかして目新しいかもしれないしタグ分類のプログラミング手腕の見せ所かもしれない。動画の公開前事前審査は、名前忘れたけど慶大SFCが作った共有サイトがそうじゃなかったかな?さらにいうと、あらかじめお勧めビデオを配信しておいてそれを切り取って再生するのはサーバ型放送のモデル。ほんとみんなそれぞれ似たようなアイデアは出してるんだよね。

課題、というか疑問をさらに3つ挙げておく。

まず、最初の段階でどうやって回すか。一応「見てお勧めする人」「お勧めを見る人」という形で層を分離しているんだけど、後者を初期段階で集める方法があまり考えられてない。ある程度持ち出し覚悟で無料視聴期間とか作るのかな?

次に、これらシステムをクラッキングしてPCから検索してタダ見する人が出たら、このモデルは崩壊する可能性もある*10んだけど、そういう行為は「フリーライダー」「クラッカー」として忌み嫌われるのか、それとも「マッシュアップ」ということで賞賛されるのか、ということ。

最後に、自分の属性と好みと視聴習慣を匿名という建前でシステムに預ける代わりに、自分の好みの番組ばかり見られる1時間150円のシステムがあったとして、見る人が使う気になるかどうか。もしくは、好みとは限らない番組を2本きちんと見るたびに10円もらえるシステムがあったとして、それで小遣い稼ぎをしたいかどうか。こちらは、ニセモノの良心の孝好氏が「見る人が金払ったら」みたいなことを(2回も)書いていたのでどう思うか聞いてみたい。

ちなみに、タイトルは、ロングテールとかWeb2.0とか書いた方が、みんなの食いつきが良いかな、とか思って書いてみた。最終的にはヘッドの部分で大きく儲けるモデルなので、ロングテールとはちょっと違うよね。

*1:ここに書いた話は、いわゆる"STBモデル"って言って、基本的にテレビ事業では成功しないと言われているモデルをあえてベースにして考えているので、実際に参考にしようと思った人はその部分をなんとか回避した上で商売に使った方がいいと思う。

*2:適切なタグについては、本人の自薦、ということで、たぶん動画投稿者にもある程度付ける自由があったほうがいいだろう。

*3:あんまりさぼってたりするといつの間にか退会処分になるかもね。

*4:ちなみにこのチャンネル選定、ある程度継続してチャンネルを見ていると好みのチャンネルとして記憶される。そのテレビで見たチャンネルの組み合わせが送られて、他の人に「他の人気チャンネル」としてお勧めされる、とか利用用途があるかもしれない

*5:ただし、どうダメだったのかの理由はわからないことに注意

*6:ただし、これがどうして好みだったのかはたぶんわからない。補助的に使うしかない。

*7:タイトル表示、シーク時間、およびCMの時間は含まない

*8:ここでは、あえてコンテンツマッチの手法はとらない。

*9:ちなみにCMもスキップ可能にしておき、スキップされたCMに関してはお金を取らない。

*10:一応、PCから見る人は限定する、という形でそういうことはしづらくはしているんだけどね。